思ったよりもだいぶコメディだった。後期フェリーニ特有の絢爛豪華な舞台美術のなかで延々と狂宴が続く。
「1900年」で残虐なファシスト信奉者を演じたドナルド・サザーランドが同じ年に性豪を演じていた。幅広すぎるドナルド。
カサノバの容姿を女性たちがからかう場面が見られたことから、イケメン設定ではなかったことがわかる。
それなのになぜ性豪なのか、あまりそこには触れられず、派手な肉体乱舞ばかりコミカルに描かれている。愛やロマンはみじんも感じさせず、官能もない。醜さ、寂しさだけが豪奢な世界で際立っていた。
特筆すべき点としては何と言ってもニーノ・ロータ!ニーノ・ロータはこんな個性的な音楽も作ってたんだ!正統派な音楽家の印象が強かったけど、ニーノ・ロータの新たな魅力を発見できたのは大きな収穫だった。
終盤にカサノバが若者から生き方を揶揄される。人間ではなく人形に安堵を見いだすようになった姿に、愛ではなく行為にのみ生きた彼の虚しい人生が集結されていたように思う。