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花束みたいな恋をしたのけーすけのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.7
大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は、明大前駅でともに終電を逃したところで偶然に出会った。時間を潰すため、二人で趣味の話をしていると、好きなものどれもが同じであっという間に二人は恋に落ちたのであった。そんな麦と絹を描いた2015年から2020年の物語。




ドラマ『カルテット』や古くは『東京ラブストーリー』の坂元裕二脚本、『映画 ビリギャル』や『罪の声』の土井裕泰監督作品。そして主演が菅田将暉と有村架純!!こりゃ観なきゃと思って行ってきました。

はい、2021年の恋愛映画暫定No.1になりました。劇中の色んな事がザクザク刺さりまくって泣いた泣いた…。
以下思い出しつつ感想(毎度ながら文章力低め)。核心ネタバレはありませんが、劇中のセリフや印象に残ったシーンを書きまくっているので、気にされる方はご注意ください。










『花束みたいな恋をした』
日々の楽しい思い出が一つ一つの花で、それらが集められ花束になるのだけど、いずれは萎(しお)れてしまう、そんな意味合いもあるのかなーとか考えさせられてもしまいましたね。

ハッピーキラキラな恋愛ものかと思いきや、良い意味で期待を裏切られ、好きなシーンやセリフの嵐で大洪水。
冒頭にイヤフォンを片方ずつ分け合うカップルのLR話から一気に引き込まれます。


刺さったセリフやモノローグの一例を挙げると、
「分けちゃダメなんだって、恋愛は」「恋愛は一人にいっこずつ」
「好きな言葉は“替え玉無料”」「好きな言葉は“バールのようなもの”」
「月5万8千円のアパートの郵便受けに入っている3億2千万円の分譲マンションのチラシ」
「映画の半券、栞にするタイプですか?」「映画の半券、栞にするタイプです!」
「いま話かけないで、まだ上書きしないで。まだ昨日の夜の余韻の中にいたいんだよ」
「女の子に花の名前を教わると、男の子はその花を見るたび一生その子の事思い出しちゃうんだって」


また、映画の話になり「結構マニアックって言われるけどね」と言ったある男が最初に出した映画が『ショーシャンクの空に』。対する別の女性が去年観た映画が『魔女の宅急便』(実写版!)と笑いのツボをグサグサ刺してきたり。
押井守が本人役として登場するってのも凄い。笑


このような感じで印象に残るセリフやシーンも多く、劇中に映画や音楽、小説にマンガ、ゲームと言ったサブカルチャー要素がこれでもか!とテンコ盛りにされており、あまり詳しくない人でもクスっと笑えたり共感できる部分が多々あると思います。
(因みに上記に挙げたセリフなどはほんの一部で、この100倍くらいグサグサきたものがありました。100倍は大袈裟かな?笑)
ナンバーガールのバンTを着てるシーンがあったりで、小物やアイテムもかなり凝っていると思われます。




基本は二人の恋愛、日常生活の描写が中心なのですが、実際の会話に加えて二人のモノローグが心情をさらに面白いものにしております(二人とも声が心地よい!)。

さらに秀逸なのは、年代にあわせたサブカルネタをバシバシ突っ込んでくるところ。
“シン・ゴジラが公開されても、ゴールデンカムイの8巻が出ても、新海誠が突如ポスト宮崎駿になっても、渋谷パルコが閉店しても、私たちの就活は続いた”
といったモノローグが「あぁ、あれって2016年だったな…!」と、数年前だけど時代の郷愁感に引き込まれ、二人とともに時代をフラッシュバックしているかの気持ちにさせられます。

そのような感じで中盤まで二人の恋愛の甘酸っぱさにキュンキュンとして、サブカルネタの嵐に泣かされました。
色んな2015年-2020年のネタが詰まっているので、5年後10年後に観返すとまた新しい感想を持つかもしれないですね。



劇中もう一つ印象に残ったセリフで、絹の母親が麦にこう言います。
「社会に出るって事はお風呂に入るのと一緒。入る前はめんどくさいけど入ってみたら“入って良かったな~”って思うの」
麦に「定職に就いて働けよ」という意味合いで言っているのですが、結構残酷に感じた部分。何故なら入ってぬるま湯になっていっても中々出られないぞ、と思ったりで。
そしてこれは恋愛への比喩とも受け取れて、好きになった当初のアツアツが徐々に冷めていく事でもあるな、、、と。


後半はお揃いだったスニーカーも就職して革靴とパンプスが並ぶようになり、徐々にすれ違いはじめる二人が描かれるのですが、このあたりも経験した事がある人にとっては共感の雨あられになるかと思います。

しかしながら終わりも悲壮、悲惨なものではなく、とても爽やかな気持ちでエンディングを迎え、改めて脚本の素晴らしさに感服でした。



麦を演じた菅田将暉は安心の安定感。どこを切り取っても自然体で流石の一言。対する絹役の有村架純もバッチリなハマり役。
序盤の信号待ちのシーンの尊さと、終盤のファミレスシーンは二人の演技の最高の見せ場となっておりますのでご注目。

あと出演時間はごくわずかだけど清原果耶、細田佳央太も出ており「おっ!」と思わせる存在感を放っていました。




因みに、個人的に一番の喜びサプライズだったのが、劇中で「Awesome City Club(オーサムシティークラブ)」というバンドの楽曲が多くフィーチャーされており、ボーカルのPORINが出演しているという。しかも彼らのデビュー年である2015年から徐々に有名になるところも描かれていて超嬉しかったです。
バンドのファンなら知っとけよって感じかもですが、この映画のTVCM等で楽曲が使われてたのは知っていたものの、ここまでしっかり出てるとは思ってもなかったのでした。ただ、てっきりエンディング曲もかと思ってたら、そこでは使われておらずだったでガックシ。



結末を冒頭に提示しちゃっているので、わかっている結果に突き進むところに当初は少しモヤっとしましたが、終わってみるとこれはこれでアリで、めちゃめちゃ満足感ある恋愛映画でした。おススメです。
ただ観終わったあとは「やっぱり恋愛と結婚は違うのよなー」と思った次第。
でも僕なら有村架純と付き合って結婚したいですぞ…笑



Awesome City Club / 勿忘 (MUSIC VIDEO)
https://youtu.be/zkZARKFuzNQ


memo
映画『花束みたいな恋をした』 坂元裕二が描く、20代の5年間の恋:CINRA.NET
https://www.cinra.net/column/202101-hanataba_gtmnmcl


2021/01/29(金) T・ジョイPRINCE 品川 シアター5 09:45回にて鑑賞。H-12
[2021-012]
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