Kawaguchi

花束みたいな恋をしたのKawaguchiのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.3
劇中、2人の会話に固有名詞がたくさん出てくるのいいですよね。それは、難病ものでもなく、貧富の差でもなく、第三者が2人の関係をかき乱すわけでなく、これは日常の話だから。

その固有名詞のチョイスが絶妙なんですよ。
坂元裕二も自分の好きなものを入れてるわけではないと発言しているし、シャムキャッツの夏目知幸も「都内から多摩川に引っ越す話なのに、シャムキャッツが使われてないのはモグリだ」と発言してるように、2人の過剰な執着が、少しダサくて、イケてないんですよね。死語ですが、いわいるサブカルなんです。この物語を執拗に何の話だったかを考えてしまうのは、過去の自分もそうだったし、自分の周りの人達の物語だからです。


優れたアートやカルチャーは、見たり感じたりした瞬間に、昨日までの自分ではいられなくなってしまうものなんですよね。
現状維持のために、摂取するものではないんです。だから、2人とも間違っていて、愚かで愛くるしいんです。

こういう恋愛映画が見たかった。坂元裕二はすごい。

2/1 追記

すごいなと思ったのが、2015年から2020年の話なのに、2人ともヴォークじゃないんですよね。政治的な目線が一切入っていない。これは明らかに意識的で意地悪なんですよね。2人をみていてイライラするし、もし身近にいたらたぶん仲良くできないなと思います。アートをサブカルに貶める人達なんです。それは過去の自分もそうだったからこそ、嫌いなのに、心惹かれてしまう。坂元裕二はクレバーで憎たらしい。
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