おときち

花束みたいな恋をしたのおときちのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.3
いや、それ僕の本棚ですか?と。


身に覚えがある。
世代も時代も違うけど、なんかいろいろと身に覚えがあることが多く、観ていてけっこうチクチクした。
身に覚えがある。若い頃を思い出してしまう。


20代前半の恋愛はある意味で特別だ。
学生から社会人へ。それまでに経験していない大きな変化が訪れる時期。
もう遠い遠い昔の話だし、心の奥にしまってあったので忘れていたようなものだけど、似たような経験はある。出てくる固有名詞はちょっと違うけど。


本作、ラブストーリーではあるが、驚くほどドラマチックな出来事はほとんどなく、至って普通。だからこそ妙にリアル。自分の話、もしくは知り合いのカップルの話みたい。
あんな出会い方で、あれだけ趣味が合ったらそりゃ付き合うよな。
それで上手くいくならいいけど、私はもう、そうではないことが多いのも知ってる。それもリアル。今の僕なら良い友達になれるだろう。


麦と絹が可愛らしくて愛おしい。2人ともかわいい。絡まったイヤホンのケーブルみたいな2人だった。
恋愛。恋と愛と。社会に出て結婚もちょっと気にしたり。近づいたり離れたりた。あ、思い出しながら書いててまたチクっとした。
ファミレス行ったなぁ。


しかし、音楽や文学、アニメなどポップカルチャーの固有名詞の多さとピンポイント感が凄い。本棚もちょっと見えだけでも「あ、あぁ、わかるわかる」ってなったのでもっとじっくり見たかった。

ceroの高城くんがやってる阿佐ヶ谷のRoji、とか、そんなセリフ映画で聞くとは思っていなかった。
全体的にセリフにリアリティと説得力があった。
ここで出てくる固有名詞を知っているからどうこう、ではなく、固有名詞が羅列されることで浮き出る人物像にリアリティや強度が増すのが面白い。


菅田将暉と有村架純、良い。
微妙な距離感や空気感。ちょっとした仕草や目の動き、声の出し方とか、演技というより実在する麦と絹に見えた。
だからこそ、ちょっとモノローグが多いかなぁとも思った。でも嫌ではなかったな。

そして清原伽耶のキラキラ感。大事なシーンでのあのキラキラ感は本当に良かった。

古川琴音も可愛いかった。


パンフレットの装丁も内容も充実で読み応えありなのでオススメです。


2021年の春に中学生となる娘と一緒に観てきた。劇場に行く前に2人でドラマ『カルテット』を全話鑑賞してから。彼女、どう観たのかな。
何かが娘の中に残って何年後かに思い出したりしたら面白いんだけどなぁ。