mercy

花束みたいな恋をしたのmercyのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.5
終電に乗れなかった
雨にぬれた
チケットを買っていたライブに行きそびれた
信号はずっと赤
駅から徒歩30分の家

最悪だ、って思うようなこと、全部最高だった。

自分だけが知っていれば幸せだったものの価値を
同じ温度で愛している人がいた。
私の好きなものを好きなあなたが好き。
ずっとおんなじこと思ってた。
今同じこと言おうと思った。

でもちょっとずつその共感が怖くなった。
私の好きなものを好きでいてくれなくなってしまったら…?同じと思っていた人とのズレや食い違いは何であんなに息苦しいんだ。

生きていくためにはお金が必要で、文化や芸術を好きという感情がお金になる手段はあまりにも少なくて。好きなものを好きでいるために”普通”になる選択をしていくと、じゃんけんでパーがグーに勝つのなんて当たり前だし、老舗のパン屋が潰れたなら駅前のパン屋で買えばよくなっちゃう。

目の前にいて枯らしてしまうくらいだったら、楽しかったあの時をずっと綺麗で花束みたいだったって思い出す恋にしておきたい。別れは花が散るって比喩表現だけじゃないんだね。

恋が終わるお話のはずなのにとてもあったかい気持ちで映画館を出た。
ふたりの1日1日の愛おしい日常を1輪1輪束ねて花束にしてプレゼントしてもらえたような気持ち。
恋をするって最高なんだな。

どこもかしこも押しボタン式にしちゃいなよ、信号。
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