TaiRa

花束みたいな恋をしたのTaiRaのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
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20代って恋愛するにしてはバカ過ぎるよね。バカじゃないと恋愛出来ないけど。

東京の割とそこら辺にいる文化系とサブカル系の合間みたいな、中途半端にミーハーな嗜好の若い子を、その軽薄さを責めるでもなく、認めるでもなく、只々慈しみながら書いた坂元裕二先生に頭が下がりますわ。彼のSNS監視調査から得られた絶妙で、過剰で、無意味な固有名詞の引用は、実在する感性に基づいているからこその説得力があって麦と絹の存在感を強くする。お笑いだったらバナナマンとかじゃなくて天竺鼠なんだ、とかそういうとこ。創作では出し切れない現実感。ちょっとしたズレ感含め。麦も絹ちゃんも別に文化どっぷりって感じじゃなくて、ほんとに趣味レベル。ああいう塩梅の人って実際に沢山いる、というか文化を消費する大半の人間はそういう人たちだ。シネフィルでもオタクでもないけどシネコンよりは早稲田松竹行く、みたいなバランスの人たち。洋楽はあんま聴かないっぽいけど家にレコードは数枚あるとか、蔵書は多いけど海外作家は読んでなさそうな感じとか、PS4よりSwitchな感じとか。ありふれ過ぎていて誰も書かない人たちの物語を坂元裕二は書くんです。あと、麦ってイラストやりたいって言いつつ、何となくやってるだけな感じもするので、結局彼は東京にいる事に意味を見出してる様にも見える。絹ちゃんとの繋がりもそれが大きそう。東京にいる理由と言うか。現実的に二人の生活考えるなら東京出ても良いしね。あの部屋から見える多摩川の向こうは神奈川県になるので、それも狙っているのかも。絹ちゃんも実家が太い東京出身者って感じが呑気さに表れていて、ぽいなぁって。そういう意味ではこれ紛うことなき「東京(の)ラブストーリー」だよね。それを書いたのが偉いなって。この映画、麦と絹ちゃん(のような/のようだった人たち)の為の映画でしょ。俺はそうでもないけど。でも感動しちゃったよ。
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