ゆう

花束みたいな恋をしたのゆうのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
5.0
オールタイムベスト更新です。。。
あまりにも自分の姿、在り方が投影され過ぎていて、流石に無視は出来ない。
映画って、数年経ってそれでも尚心の奥深くに大切な物として残っているものが、本当に自分にとって良い映画なんだろうという考えがあるので、すぐに更新とはしないのですが、本作は人生としてのテーマに成り得るであろう確信があったのでやむ無しです。

『確かにこの島は食糧が豊富だ。生命を維持するには差し支えないだろう。しかしフランツ、人間が生きて行くと言う事は単に生命を維持することではないんだ。他人との交流を持って、人類の歴史が築いてきた文化の恩恵を受け、そしてまた新たな文化を我々が付け加えて行くと言う事。それが本当に生きると言う事なんだ。この無人島に留まっていては、そういう生き方は出来ない。』

上記は不思議な島のフローネというアニメで出てくるセリフで、私の座右の銘でもある。

学生時代にバンド組んで、沢山の音楽を聴いて、作曲や作詞するからには感性を磨かなきゃと、映画を見て小説を読んで舞台を見てマンガ読んで美術館行ってという生活を送り、ものの見事にサブカルくそ野郎と化していった自分。
麦くんの本棚、ピンポンとかシガテラとかドラゴンヘッドとかAKIRAあってさ、着てるTシャツもブルース・ブラザーズとかナンバーガールとかで、押井守が好きでとかお前は俺か!?とならざるを得なかった。

カラオケ屋に見えないカラオケ屋で歌っている曲がGReeeeNだったり、大学の集まりで歌われてる曲がセカオワさんだったり、マニアックな映画観てるという人の代表作がショーシャンクだったり、魔女の宅急便の実写版だったり、所謂"相容れない世界の人達"が好きな文化の対象のチョイスも絶妙と言うか。
菅田将暉、GReeeeNの映画出てたけど大丈夫か?とか、魔女宅の実写版撮った人、今度ホムンクルスの実写版撮ろうとしてるけど大丈夫か?とか無駄な心配しちゃったな(笑)
ワンオクとか聴く?のアンサーが"聴けます"って言うのももう堪らなくて。
こう言った拒絶感、文化・サブカルを必要としないで生きていける人達とで勝手に線引きしてる辺りも正にって感じで痛々しくもあり、愛おしくもあり。。。

だからこそ、労働という環境の変化で"あっち側"に行ってしまう麦くんが本当に辛くて見ていられなかった。
自分でもよく分からないけど、前田裕二の人生の勝算っていうビジネス書読んでるシーンで涙出てきた。小説を読めよと。画集を見ろよと。
前田裕二氏はSHOWROOMというライブ配信サービスで成功した人。麦くん自身が批判してた遊びと仕事は違うと言っていた正にその遊びの部分で成功した人の本を読んでいるという皮肉と残酷さ。

私も昔は映画を年間で200本とか見ていた時期があったし、タワレコやHMVで何時間も視聴して良曲発掘したりとかしてたけど、今は生活に追われて全然出来なくなっている。
映画も一年に数本見るか程度、Apple Musicのサブスクは解約した。数千冊とあった漫画は売り払い、小説は買って満足して読めてないものが積まれている。
ゲームもレベル上げという行為がめんどくさくてRPGは出来なくなってしまったね。
昔楽しかった事が本当に出来なくなってきた。

労働で押し殺した感情の分だけ感性が死んでいくような感覚、劇中で言うところのピクニック読んでも何も感じない側になっていく恐怖、胸が張り裂けそうなくらい分かるし泣けてくる。

ラストのファミレスシーンもやってる事はブルーバレンタインと何ら変わりないんだけど、戻らない・取り戻す事の出来ないものが恋人や思い出とプラスして、楽しかったサブカルチャーも乗っかってきて、身につまされる思いで爆発しそうだった。(ジョナサンで振られた経験があると言うのも一個乗っかってたりする。)

男女の別れというよりは、己との対峙、人生においての大切な部分を強く考えさせられるという意味で定期的に見返したい一本になる事は間違いない。
本当に素晴らしい映画体験だった。
ゆう

ゆう