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花束みたいな恋をしたのOMUのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

趣味が完璧に合致する運命の人とのある種ありきたりな恋愛の話。

冒頭別々の席に座ってる2人で、この2人は別れますよーと早速分かるところから始まる全体の構成、展開が上手いなぁと思いました。

2人のモノローグによる自己紹介から出会いに至るまでの場面、いわゆる「普通」と呼ばれる人たちに対して過剰な自我を持つあの感じは、自分の若い頃を思い起こさせてむず痒い気持ちにさせられます。
また同時に彼らと同じような趣味を持ちながら、なんとなく彼らの輪に入れなかったことも思い出し…
羨ましいなあ、と眺めていたあの頃の苦々しい疎外感を映画で再体験するとは思ってませんでした。笑 懐かしい。

そんな前半と打って変わって、この映画の骨子というか、私が良いなあと思った部分は付き合ってから別れに至るまでのなだらかな変化を描く後半で。
気づいたら変わっている、と言う感覚がすごく自然に描かれていて、見てて苦いが心地よい、不思議な感覚に陥りました。
セリフや場転の仕方が良いのかなあ。

ただ、彼らは結局根本の意味で変化したかと言うとその辺のことは描かれておらず。結局、付き合っている間ずっと彼らはお互いの本来の姿ではなく、理想の同志、もう1人の自分としてしか相手を見ていなかったからこそ、ズレ始めた時に話し合いなどでの軌道修正もできなかったのかなあと。お互いを見ないまま突き進む、そんな関係は少しやっぱり寂しいなぁと思いました。人間関係て難しいよなあ。
でも2人とも優しい子だなあとも思います。麦くん最後まで物投げなかったし。名前も良いですよね。麦と絹。
その辺のキャラクター造形も逐一上手いなあと。
いや、正直に言えば色々狡い…笑 

最後の麦くんの姿見ているとイラストレーター業再開したのかなあ、とかその辺のことも描かれず。
オシャレに終わっていった部分も含め、まさに花束みたいに、綺麗にラッピングされた可愛らしい短編恋愛小説みたいな映画だと思いました。
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