このレビューはネタバレを含みます
面白かったです。
「サラリーマンではない何かになりたい」と軽い野心を抱き上京して来た若年「あるある」。
趣味趣向、文化背景がぴったり合って居心地が良くてもそれが結婚相手として相応しいかは別な話という厳しさがこの映画にはある。
「食べるために」と本職を横に置き就職してしまうと自身より彼女や周囲がうるさくなる。そんな経験に同調する者は少なくないだろう。
キャスティングが良いので監督の意図もしっかり伝わって来る。結果的に幸福を掴む事が肝要なのだが、こういった「季節」は人生でそう何度もない。
冒頭とラストに出てくる象徴的でおそらく本作のメッセージでもあろう、イヤフォン共有の話だが、あれはL+Rで同時に聴かないと音楽の意味はない——ということと「1+1が2ではなく3以上の価値を持つ出会いが大切」と暗喩的に示していると思う。しかし絹と麦はそうならなかった。
面白かったのはお互いが再会した時。明らかにお互いが連れている相手が無難にグレードを下げたような感じがそこにある事。結局喜びも苦しみも分かち合えるような「生涯を懸けた恋愛は1度きりなのだ」と感じさせる。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』とのヴァージョン違いの関係かもしれない。