乃

花束みたいな恋をしたの乃のレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.5
花束みたいな恋をした

話題作、やっと初鑑賞。
ネタバレ&長文注意⚠️

色んな意見があってそれを話せるのが楽しい。自分の過去を反省したり、昔の自分たちと重ねたり、とベタな楽しみ方ができた。
終わりがあっさりしてるのが意外だったからこそ、どこまでも美しい映像だったという印象。

好きでも一緒にいられるわけではない、なんてことない誰にでも経験したことあるような要素が詰まっているおかげで、みんな過去の恋愛を思い出すから色々と考えさせられるのだと思う。

押しボタン式の赤信号に気付かずに、ずっと赤のままの信号前2人で待つところとか凄く綺麗な名シーン。現実だったらこういうところばかりを思い出して、綺麗な記憶になっていくよね。

別れ話をするファミレスも良い。

色んな出来事があって心が冷えきって、よしきちんと話をつけようと互いに思ってる日のこと。彼氏が別れ話を切り出す。「別れよう」の決定打を口にすることができない彼氏に彼女が口を開き、今までの感謝を伝え、嫌いになったとかいうわけではなく別れるべきだという流れに持っていく。この時点で彼女は決心していて戻れないと覚悟を決めている。にも関わらず、彼氏は恋人関係ではなく家族としてなら一緒にいられると泣きながらプロポーズをしてくる。想像できる未来を口にして、ずっと一緒にいたい。と。

私はあのシーンでプロポーズするのにひいてしまったけど、それは別に麦が理解できなかったわけじゃない。むしろ自分の過去の別れ話と痛いくらいに重なったから。
逆にあれを許せて(心に妥協して?)関係を緩やかに変えていけていたら、今も私は別れずにいたんだと思う。

趣味と絹と生きることが全てで、それをするために働きはじめたのに、働くことが目的になって鬱っぽくなっていた麦。以前と変わってしまった麦に悲しくなっているだけで、彼の心に寄り添うことなく浮気する絹。

「人が一緒にいるには価値観が同じか、器が大きくないといけない」ということを心に響いたセリフとして教えてくれた勇太が言っていた。

彼女たちはサブカルな趣味を通して好きな物がとことん一緒の価値観ばっちり同じの2人。でもだからこそ生活環境が変わって、価値観のズレが生じた。器の大きさまで彼女らは一緒だったんだと思う。

最後にあんなに本音を語るのならば、修復可能なうちにもっと多くを話せていたらよかったのに。
苛立ちたくなんてないし楽しい気分でいたいのに、言いたいことをつたえると余計にぶつかる2人は見ていて刺さる。余裕をもって思ってることを伝えるってほんとに難しいよね。

でもそもそも、天竺鼠のライブを見逃した共通点のある2人だけれど、絹は意図的に行かないことを選んでいる。

元カレでもない多分何回かデートしたことあるだけの自分の名前も覚えていないハイスペックイケメンと偶然に会い、何かラブな展開があるかもと焼肉に着いていく。
結局、楽しくもない時間を過ごして「大人っぽくて余裕のあるように見える人は結局自分を見下しているだけ」と自分に言い聞かせていた。

サブカル好きではあるものの、好きな物よりも男を優先(しかも特別思い入れのあるわけでもない)させてしまうのはなんで?
多分絹がかなり受動的な人間だからだろう。

ということで私はあまり絹が好きになれなかった。有村架純はかわいいけどね。

麦は誠実に2人でずっと緩やかに一緒にやっていきたいと願っていたけれど、絹はそうでもなかったもんな。自分を抱擁してくれる人ならなんでもいい感じ。途中からは余裕のない麦に惹かれることなく、ただなんとなく一緒にいる。

花の名前を教えてもらったら男はその花を見る度にその女を思い出してしまうと意味ありげに言った絹が、最高に盛り上がっている感情の時期にも関わらず花の名前を麦に教えなかったのも印象的だった。

けど別れたあとの2人は爽やかで、美しい思い出をひっそりと心に住ませた状態で互いに別々に生きていく。ここがすごく現実的でさっぱりとしていてよかった。
乃