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花束みたいな恋をしたのringoのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.1
久々に感想が長くなった。

まず少し話が逸れるけど、いわゆるメジャーな音楽や有名な映画しか知らない人のことをちょっと馬鹿にしてる2人。けど私も人があまり知らない音楽や映画を見つけて好きになることでちょっと嬉しい気持ちになるから、気持ちは分からなくもない。それでも価値観は人それぞれだ、と今は思える。(だから麦と絹を見ていて学生時代の自分に対する若干の羞恥心が出てきた、これがいわゆる共感性羞恥心なのかな)

といいつつ、友人の感想を聴いて予想してたけど、ありきたりな恋愛の始まりと終わり、私の頭の片隅にも似たような記憶があった。

マイナーなほどなかなか趣味嗜好が合う人が見つからないから、余計に心地良くて2人の世界にどんどん入っていく。映画、音楽、本、お揃いのジャックパーセル。恋愛の始まりはたいてい楽しくて幸せで仕方ない。

「始まりは終わりの始まり」

ところで絶対別れないって自信があるカップルなんているんだろうか。正直なところ私にはわからない。いつも幸せが始まるといつか終わるんだろうなと考えてしまうタイプだから。

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大学時代ってほんと人生の中でも魔法にかかったように自分の趣味嗜好を全開にして過ごせる日々な気がする。制服もスーツもない、時間割もバイトも自分の意思で選べる。

そこから就活が始まり、ほとんどの人が魔法から覚めたように趣味嗜好を封印し、個性を消してひとつの形に収まっていく。そしてその後は就職先の仕事に追われて時間が過ぎていき、好きだった音楽や映画への関心が少し薄れていく。
(玄関の靴が2人が好きなジャックパーセルから革靴とパンプスに変わってた描写が良かった)

なんか自分で書いてても残念でありきたりな人生だなと思うけど、私もこのルートを選んで歩んできた1人。だけどそれで得られたことも沢山あるし、これで良かったと思ってるから、いつまでも学生気分でいるのもどうかと思うという麦の考えに共感してしまった。

価値観がバッチリ合う人と恋愛ができたらそれは幸せだけど、それでもいつか少しずつ変わっていく価値観に、お互いが歩み寄れないようではいつか終わりが来る。

恋愛や結婚はタイミングって良く言うけど、この2人がもし既に籍を入れて結婚していたなら、別れなかっただろうな。離婚するくらいなら、きっとお互い歩み寄る努力をもう少しできたと思う。恋愛も結婚もそんなもんなんだろうな。

(この映画を学生時代に観ていたらきっと感想は違ってた。大学卒業して会社に勤めて結婚もした今だから思うことを書いた。)

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なんとなくお互い別れると悟ったときって、最後のデートなのに楽しいんだ。最後だからこそ、最初のように戻れて楽しい。

これから始まる2人、終わりそうな2人。
ここは切なくて良いシーンだったなぁ。

あと、別れたから話せることがたくさん出てきて、付き合ってた頃より楽しくなる、そんなどうしようもなく良い関係、「愛がなんだ」のあるシーンを思い出した。

ストリートビューにうつる、顔にモザイクのかかった2人。出逢って別れた2人が世の中にありふれていて、この映画がありきたりなどこにでもある恋愛をした2人の話だと言っているようで妙に納得。

別れた2人は、たまにちょっと思い出したり、忘れたり、それでもそれぞれの今を生きてる。予想よりエンディングがふわっと軽く、明るかったのも含めて良い映画だなと思えた。
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