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花束みたいな恋をしたのSQURのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
1.0
前半部はそこそこ楽しくみられるのだが、後半部からの演出がかなり酷く、サブカル人表象のリアリティとかそれ以前の問題になってしまっている。ひたすら”仕事に専念して趣味ができないせいですれ違う”ことを表現するエピソードを繰り出してくるのだが、それ以上でもそれ以下でもないため、テーマが深まっていかない。エピソードがどれも説明的なため、観ていて苦痛を感じる。
特に一応見せ場っぽく描かれるファミレスのシーンはこの映画の集大成と呼べるくらい酷い。「物語をエモーショナルにするためだけに配置された謎のカップル」が登場し、しかも見せ場として撮っているからなのか無駄に尺が長い。こういう反復はさっと映すからかっこいいのであって、押し付けがましく何度も繰り返すのはとても不自然だし、観ている側としては鬱陶しい。あまりに馬鹿馬鹿しくて、苦笑いしか出ない。
また、全体としてみたときに物語の開始と着地でテーマがズレている。しかも世間から少しズレたサブカル好き同士の恋愛というオリジナリティの部分を捨てて、カップルの相互不理解の末の離別という非常に凡庸な方向へと着地している。
この映画は、労働とサブカルの両立の困難さとその間での自己同一性の葛藤を描くことから逃げ、感性の違いがもたらす恋愛の結末を描き切ることからも逃げた。そこを描かないんだったらこの題材を扱う必要ありました?たくさん出てきた作品名がただただ虚しい。私たちは消費されてしまったんですね。
つまらないと言えばつまらないけど、苦痛を通り越して怒りすら湧いてくる。
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