結局カレー

花束みたいな恋をしたの結局カレーのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.6
コロナ禍に入ってから恋人との別れを描いた作品のヒットが増えた気がする。J-POPだと香水、ドライフラワー、シンデレラボーイとか。邦画の筆頭がこの作品。他にも別れた恋人との回顧録を描いた「ちょっと思い出しただけ」や「明け方の若者たち」等も話題になったりして。世の中が色んな別れを経験した今の時代だからこれだけヒットしたのかな、とも思ったり。

学生時代は好きなことで繋がって好きになったから付き合って好きだから一緒にいれる。お金は多少なくたって時間も頭の中も相手のことで埋めつくせる。のに社会人になって好きなものと大切なものが区別されて、好きを楽しむ人、好きを諦める人、好きで食べて行く人と分岐する。変わりたくないのに変わってしまう、愛と責任。2人のズレの描き方が繊細で的確で、50代半ばの坂元裕二はどんな解像度で世の中や若者を見てるんだ?笑
そしてサブカル好きへの殺傷力。誰かと意気投合することの嬉しさ、自分は「わかってる」側だと思う喜び、生きるために仕事をしてる人をどこか下に見て”楽しく生きる”至上主義。絹みたいな生き方が羨ましくて、言い訳しながら麦みたいな生き方してるひといっぱい見たことあるなぁ。ほんとに役者も演出も嫌なくらい見事だったし所々共感してしまうのが悔しい。笑

花束みたいな恋をした。”女の子に花言葉を教わるとその花を見るたびに彼女を思い出す。”映画の半券のしおりとか、天竺鼠とか、ミイラとか、イヤホンとか、ファミレスとか。思い出が詰まった恋であり、決して永遠でない恋。でもその実態はひとつひとつの花は死んでいるのに束になってるから華やかで美しく記憶にも残る。斜めに見過ぎかもしれんけどこのタイトルって皮肉?笑 2人はその美しさだけが記憶に残って生涯あれを超える恋はなかったとか言ってそう。たった一輪でも大地に根ざした花みたいな恋ができるといいよね、2人も私も。