けーはち

花束みたいな恋をしたのけーはちのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.9
しばしば「ショットガンみたいな下痢をした」みたいにギャグにされる口ずさみやすい表題が印象的。とある男女の関係の一部始終を淡々と描くロマンス映画なのだが、基点となるサブカル趣味のスノッブ仕草(押井守は常識、「ショーシャンクの空に」が好きは浅い、とか)がオタク寄りの趣味を持つ男女には実に痛々しい共感性羞恥をもたらした。後半、仕事人間になる男&学生時代と同じ感覚の女の溝が深まるのは、ジェンダー差もあるし、地方の実家に頼れず生業に励まざるを得ない男&広告代理店勤務・首都圏在住高給取り両親を持つ女という、結局はスネを齧れる実家があるか否かの格差に起因する点もまた残酷。花束は綺麗だが根なし草ですぐに枯れる。綺麗な絵空事でくっついていられるのは学生時代のモラトリアムまで、以降は生活や経済観念のバランスが合う相手と生きていかないとね、という、意地悪な現実を見せるのが本作なのである。