カレーをたべるしばいぬ

花束みたいな恋をしたのカレーをたべるしばいぬのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.0
食わず嫌いは良くないと思って観た本作。ティーン向けお涙頂戴激アマ恋愛映画と思っていたら痛い目を見てしまった。現実性を突き付けてくる邦画はやっぱり嫌いだ。
タイムスリップとか、大事故とか、留学で離れ離れとかそういった短絡的なアクションが全く介在しない残酷さがある。

斜に構えている部分や言い回しに分かってしまうポイントが多い。『仄暗い水の底から』に続き、こっちはこっちで世代に刺さってくる描写も多い。所々に相容れない同族嫌悪的な嫌さもある。
我々カップルのお互いに似ているけど絶妙に苦手な感じの大学生が描かれていて、それだけリアリティが高いことの証左だと思う。SNS等のツール描写に逃げず、人間模様を丁寧に映しているので余計に解像度が高い。

恋愛特有の素敵さを表現する演出が日常に上手く溶け込んでいる。明大前とか多摩川沿いとか場所のチョイスが絶妙。潔い告白も良いと思う。映画的な嘘も多分に効果を発揮している。

ゼルダやってて、ちょっと見に来て、でもやらないで、音出してやっていいよって、貰ったイヤホン着けるって………
気持ちと気遣いのリアル過ぎるすれ違いに声が漏れた。

しかし、金だ。金銭面での納得感はほぼない。社会人になってからのすれ違いは、金銭感覚の違いだろう。根深いものがある。そこを擦り合わせる程に本気でぶつかったことがない、一緒にいたいと思うほどにならなかった3年間。甘いとか悪いとかそういうことではなく、初めから価値観に相違があったのだ。

あと、ネコはもう少しちゃんと管理しよう。窓は開けられないし、物はそんなに置けないと思う。

話自体はかなり単純だけど、具体的な表現が多くて厚みがでている。特にファミレスのシーンは、恋愛における栄枯盛衰の対比という、素晴らしい映画体験を齎してくれた。
恋愛が人生のすべてではないというメッセージ性は、10代の男女にとって非常に有用だと思います。終わり方がかなりご都合主義的な甘ったるいのもこの辺りに寄与しています。

自身の過去を投影し続けられさせられる120分。強いて言えば、絹が浮気していた可能性があることと、所々に匂い立つ死の接近がこの映画の数少ない休憩所でしょうか。金銭面に言及した時にも述べましたが、結局は恋から愛へは発展していないのが肝心なポイントですよね。

彼女とは5年目になる。この先どうなるかは誰にも分からない。俺も、労働というシステムを憎んでいる。夢から醒める前に、折り合いをつけないといけない。ただ、この世で最も好きな相手と結婚せずしてどうするという気持ちは確固として強くある。

■完全な蛇足
オダギリジョー渋過ぎる。あるわけないけどクウガのリメイク激しく待望ーー