ハルノヒノヨル

花束みたいな恋をしたのハルノヒノヨルのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

最後、背中を向けたまま互いに手を振るシーンで、ワンピースのアラバスタ編ビビとの別れを思い出した。

黒歴史と言うほどでもなく、しかし青臭さには覚えがある。あー、そういう時期もあったなぁなんて、共感性羞恥に耐えながら見始めた。
何者にもなれず埋もれているのに、サブカルにかぶれて人とはちょっとちがう自分でいたい。
そんな自分を特別に、主役にしてくれるのが恋愛なんだと思う。
幼い恋は、まるで魂の片割れを見つけたみたいな驚きとともに始まった。
恋人は全てを共有できる唯一無二の運命の相手なのだ。
けれど、人生のステージが移ろうにしたがって少しずつズレが生じていく。
結婚の誓いの言葉の中に「喜びの時も 悲しみの時も」とある。
絹は喜びを共有したい。
麦は悲しみを共有したい。
それが叶わなかったとき、彼らは共にいられないと感じたのだろう。
それでも、自分を特別にしてくれた恋を簡単には捨てられない。
悪あがきにプロポーズをして、それが決定打になってしまった。
恋愛感情がなくなっても。
わかっていたのに、言葉として形をもってしまって、認めるしかなくなってしまった。
花束を贈り、花束をもらえる人になれた。
飾られた花束はやがて枯れた。
結実もなく、美しさも失って。
心踊る冒険の終わり、ふたりはお互いに麦わらの一味でビビだった。
去っていっても、残されても、あのときの冒険の記憶は輝いたまま色褪せない。
恋とはそういうものなのかもしれない。
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