とてもよかった。
サブカル趣味のふたりが、出会って恋に落ちて一緒に暮らして離れてしまうまでの物語。
互いに惹かれ合うときの熱さ、生活をしていてすれ違う冷たさの両方が丁寧に描かれていた。これは普遍的な物語だ。
絵を描くのが好きだった麦くんが仕事を頑張って余暇にはパズドラしかできなくなってしまうことのリアルさよ。
観ていて思ったのは、ふたりの判断の積み重ねだけが終局に至った原因でないように思えるということ。
本作では社会問題の存在も示唆されている。絹ちゃんは就活で圧迫面接を受けているし、麦くんの会社は働き方に問題がある。前者はおそらくなくなりつつあるけれど、後者はまだ今の日本ではよくある。
個人の恋愛という見方と、社会のなかで生きる個人の人生という見方ができた。優れた脚本だと思う。
自分としては麦くんの、仕事は責任をもって楽しくなくてもしなくてならないという古風な人生観よりも、絹ちゃんの楽しんで生きていたいという人生観のほうに賛同したくなった。
Awesome City Clubがインスパイアソングとして制作した『勿忘』は名曲。映画から楽曲が生まれるのって豊かな文化だ。