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静かなる男のodyssのレビュー・感想・評価

静かなる男(1952年製作の映画)
3.0
【牧歌的なおとぎ話】

アメリカからアイルランドに帰ってきた青年(ジョン・ウェイン)が地元に馴染みながら、恋する女性(モーリン・オハラ)と結ばれるまでを描いています。

アイルランドという国は、両大戦間に英国から独立したのですが、そのごたごたはかなりあったし、この映画は多分、制作時と同じ時代(1950年代前半)が時代設定なのでしょうが、その頃でもIRAだとか政治的な動きはそれなりにあったろうと思うのですが、あまりそういう匂いがしないのは、古典映画の限界というか、作り方からか。

たしかにそういう古典的な枠で見ればまとまりはいいし、それなりの映画ではあるでしょう。でも、今の目で見ると少し牧歌的過ぎる気もします。

そもそも、アイルランドは古来貧しく、だからこそアメリカへの移民をそれなりに出している。有名なところではケネディ大統領、そしてその娘である現在の駐日アメリカ大使のケネディも、先祖はアイルランドの出だった。そういう中、アメリカからアイルランドに帰ってきてどの程度経済的に楽な暮らしができるのか、ちょっと疑問。もっとも、主人公の青年がアメリカにいられなくなった事情は経済的なものではなく、それなりに納得は行くのですが。

だから細かいことを気にせずにお話だけ追って見ていけばいいのですが、20世紀のアイルランドが抱えていた諸問題については映画でもそれなりに描かれるようになっているのが最近の動きなので、それを知っている身からすると、いかにもおとぎ話だなあ、という感想になりますね。別にアイルランドが舞台でなくてもいい。アメリカにとって異郷だから、おとぎ話をするのには都合がよかったってことでしょうか。
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