櫻イミト

静かなる男の櫻イミトのレビュー・感想・評価

静かなる男(1952年製作の映画)
2.5
フォード監督が自分の故郷アイルランドへの郷愁を込めた映画。ヒロインもアイルランド出身のモーリン・オハラ。アカデミー賞監督賞とカラー撮影賞を受賞。

ある日アイルランドの小さな村にアメリカからショーン(ウエイン)が帰ってくる。彼は勝気な村娘メアリー・ケイト(モーリン・オハラ)に一目惚れするが、粗暴な兄レッド(ヴィクター・マクラグレン)とソリが合わず、二人が結婚しても持参金を持たせないという。。。

始まってすぐに「遥かなる山の呼び声」(1980)を連想し、やがて本作が元ネタであることがわかった※。山田洋次監督作での高倉健と倍賞千恵子は、本作のウエインとモーリン・オハラを参考にしていたのが解った。

オハラは「長い灰色の線」(1955)と同じような不自然に勝気な女性を演じている。フォード監督の好みだろうか?本作を通して主役カップルの心が通じ合ったことは無かったように感じた。

冒頭が電車の到着から始まる。フォード監督の作品で何度見たことだろう。田舎共同体の閉鎖的な気質があまり好きではないので、それを謳歌するような本作にも好感が持てなかった。フォード監督の作品全般に田舎や仲間内の閉鎖性を感じている。

※山田監督によると、ヴィクター・ヤングによる映画「シェーン」(1953)主題曲の邦題「遙かなる山の呼び声」から着想を得て制作された。本作の音楽もヴィクター・ヤングである。

※アイルランドは現在人口400万人ほどの国だが、全米のアイルランド系アメリカ人は4000万人以上いる。カントリー&ウエスタンはアイルランド移民が持ち込んだアイルランド民謡が発展したもの。

※”男は陽気な酒飲み、女性は赤毛で気が強い”というアイリッシュ気質を知るには、本作を観るのが一番わかりやすいと言われている。
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