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静かなる男のSのレビュー・感想・評価

静かなる男(1952年製作の映画)
4.0
ハリウッド映画史に輝く名コンビ、ジョン・フォード監督とジョン・ウェインのタッグで、アイルランドの牧歌的な風景と素朴な人々が織り成す名作人情喜劇。

祖国に帰ってきたアイルランド系アメリカ人の、ショーン・ソントン(ジョン・ウェイン)が、勝気な村娘メアリー・ケイト・ダハナー(モーリン・オハナ)と情熱的で波乱に富んだ関係を築いていく様子を描いていく。

◼️
メアリーが羊を追う姿にショーンが一目惚れする冒頭シーン。メアリーの赤と青のスカートのコントラストの鮮やかな色彩が目に飛び込んでくる。テクニカラーの色彩が叙情的で美しい。メアリー演じるモーリン・オハナは鮮やかな赤毛の持ち主で、「テクニカラーの女王」と呼ばれていたという。

撮影はフォード一家がアメリカ移住前に住んでいた、アイルランド西部、ゴールウェイ県とメイヨー県の境で行われ、フォード映画につきもののアクションが、随所に盛り込まれている。全シーンが名シーンだと言っても過言ではなく、これぞ映画だと思わせる。

元ボクサーのアメリカ人ショーンが、妹メアリーとの結婚を認めない粗暴でひねくれ者の兄レッド・ウィルと殴り合いを繰り広げるというフォードらしい叙事詩なクライマックスは圧巻だ。
ふたりの戦いはどちらも飲み過ぎて、続けられなくなったので終了。彼らは友情を結び、最初的にはウィルが妹の結婚を認めたことで家族になるが、この映画は男っぽさが売りではない。

メアリーは人間関係の中で単なる恋愛以上の存在として描かれている。ショーンとの結婚を望んでいるが、兄に反対されたまま結婚することを拒む。
メアリーは祖先から引き継いだ家財道具、つまり好きな物に囲まれて生活するのが夢であったが、兄の反対から持たずに結婚した。
当然、兄は持参金も持たせなかった。それはアイルランドの風習では恥に値することであったが、アメリカ人のショーンには理解できない。
そんな異文化の交流の面白さが根底にある。

2024/02/25 U-NEXT
字幕版との差が歴然だったため
画質が美しい日本語吹替版での鑑賞。
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