消々

ナイン・デイズの消々のレビュー・感想・評価

ナイン・デイズ(2020年製作の映画)
5.0
美しさに心が締めつけられた。これは見てほしい。
生まれるべき適格者を選ぶ面接官と、その候補者の9日間の話。面接官のウィルは数人の候補者に課題を与えながら、生を受けるにふさわしいかどうか見極めている。その候補者としてエマという型破りな女性が現れる。
ここからはネタバレ含むのだけれど……
エマは最初から人と関わることを望んでいたのではと思う。冒頭、ウィルに桃を食べないかと誘う場面がある。他の候補者はウィルにそんな事求めないのに、彼女はそれを望んだ。彼女は人と関わること、誰かの外側や表層をテレビ越しに眺めるだけじゃなくて、人と関わる中でゆれ動く感情やうまれるスパークルが生きることだと直観していたのかもしれない。共に時間を過ごすことで、生きている手触りがほしかったのかもしれない。そしてウィルとの距離を少しずつ縮んでいく。中盤、ウィルが高校の演劇部で主役になったこと話した時、エマにまた体験したいかと聞かれ、否と応えたうえで「because it makes me feel living again.」とつけ加えた。でもここから繋がるラストが、圧巻。
ラスト、ウィルが高校時代に演じた役か、もしくはそれと関係ない詩の朗読をエマの前でやるんだけど、その躍動感といったら。彼は再び「役」を演じることで「living again」、ウィルは生きていることをもう一度実感したのだと思う。もう、心が鷲掴みにされて苦しいくらいに美しくて泣いた。
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