木靴の樹の作品情報・感想・評価

『木靴の樹』に投稿された感想・評価

matsu

matsuの感想・評価

4.0
19世紀末の北イタリアの農民たちの日常生活や仕事、結婚などを描いた傑作

生活のほとんどが宗教に根ざしているのがよく分かった

大地主の力が強すぎる
(土地は全て大地主のもので収穫の3分の2は大地主の取り分)

ミネク少年の木靴が壊れて、父親が近所の木を使って作り直す

近所の木は大地主のもの

勝手に木を使ったから10人以上いる家族全員、その土地、家から追い出される
(新婚夫婦と赤ん坊もいる)

その時代、追い出されるのは「死ね」と言われているのと一緒
カンヌ映画祭パルムドール受賞作。19世紀末の北イタリアの貧しい小作農の生活をドキュメンタリータッチで描く。

予想以上に地味な映画だった。前半は昔の農作業と暮らしぶりを自然光で淡々と描写していて、無駄に長い印象。後半から話に動きがあり二つの脚色が入る。ひとつは、農夫が金貨を拾い馬の蹄に泥と混ぜて隠すエピソード。もうひとつは子供の木靴を作るため地主の樹を切り倒すエピソード。どちらも予想通りの不幸が待っていて悲喜劇として描かれる。

農民の生活をじっくり描く作品はドキュメンタリーのコンテストにありがちで、破綻がなければ入賞するパターンが多い。本作もその類に見えてしまった。特筆するような映像は見つけられず、わずかな脚色も何かあざとを感じてしまった。
馬農耕,白鳥首落とし,とうもろこし荷積み,街,シーツ落とし,手押し車,雪,お湯,豚屠殺,移動式衣料屋台,メリーゴーランド,人形劇,視力検査,靴酒飲み,馬蹄コイン隠し,木靴壊れ縄縛り,ナタ木切り,苗埋め水やり,馬喧嘩,
船頭スレスレ,養護院会食
木暮修

木暮修の感想・評価

5.0
19世紀末のイタリア。地主が大きな力を持っていた頃の農民の日常を季節の移り変わりとともに描いた作品で、読み書きの出来る者が少ない村から小さな子供が片道6キロの道のりを徒歩で通学するようになる。その子供の為に親は靴が必要になり、悲劇が起こる。舞台となったベルガモはオルミ監督の生まれ故郷だ。

ドキュメンタリータッチで農民の生活を描いている。アンドリュー・ワイエスの絵画のような質感も感じる。

畑を耕したり、洗濯したり、恋をしたり、親子喧嘩をしたり、教会に行ったり、お祭りがあったり、家畜のいのちをいただいたり、子供が生まれたりする。この映画の登場人物が歩いているシーンが特に好きだ。

アルゼンチンの短編小説にこの映画のことが出てくる。
娘がハリウッド映画のビデオを買って欲しいという。買うかわりに、まず主人公が買った『木靴の樹』のビデオを先に自分に観せることを条件にする。ビデオを再生させると興味のなかったはずの家族も3時間という長い間、誰一人席を立たず、「魔法にかかったように」映画に釘付けになる。フィクションなのに「まるですべてが目の前で起こったことのように不幸な人たち」をじっと見つめ続ける。
私もずっと昔、録画していた『木靴の樹』のビデオを深夜に見始めて朝方まで、小説の家族と全く同じように釘付けになって一気に観たことがあった。その間はイタリアの農村で登場人物達と一緒に過ごしたような気持ちがした。
その小説を書いたマヌエル・プイグは大変な映画好きで若い頃、イタリアで映画の助監督もしていた人。小説のタイトルは「昨日の映画、ありがとう」。

キアロスタミが好きな人にオススメしたい。
Omizu

Omizuの感想・評価

4.0
【第31回カンヌ映画祭 パルムドール】
これはけっこうよかった。『聖なる酔っぱらいの伝説』などのエルマンノ・オルミ監督が中世イタリアの農奴階級の生活をじっくりと映した作品。

ジャケットとかタイトルからして『ブリキの太鼓』みたいな子どもの話?と思ってたんだけど全然違った。

最近みたのだとベルトルッチの『1900年』に少し近い感じ。

農民たちの貧しい暮らしを淡々と映していくだけなのになぜか目が離せない。プロの俳優ではなくそこに住む素人の農民たちを使っただけありリアリティがある。

その暮らしの中に家を巡礼して回る「聖愚者」のような青年がいたり、若者二人の素朴な恋愛と結婚があったり、タイトルの「木靴」をめぐる展開があったりと地に足をしっかりと着けつつも繊細で芳醇な演出が実に素晴らしい。

リアリティある農民としての行動の中にしっかり伏線を張り巡らせていたりと脚本もよくできている。

かなり濃厚で面白い3時間だった。
あさ

あさの感想・評価

-
木靴の樹ね…!とじわじわタイトル理解。1978年、満場一致のパルムドールを受賞した映画。自然光だけで撮られた映画。

正味たいへんに長いし、淡々と寡黙〜に進んでいくので話を読み取るだけで体力を地味に使った。運良く手持ちの本に記載がある作品で大変に助けられてしまった。ただただ農民の生活を切り抜いて眺めているようで、しっかり話の筋は繋がっている。ので、筋トレしながら見たらアカンのよと思いながらも、ながら鑑賞した。

最後のミネクの表情がなんとも。19世紀末、この映画が撮られた1978年からしたら、地主と農民の歴史は案外そう遠くはない話だったかもしれない。けどまあ、理不尽で不条理な世の中なのは今も変わらないかしら。いやでも、木だぜ?とは言いたい。
kinako

kinakoの感想・評価

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19世紀末のイタリアのある地方の農民の生活を淡々と描いた映画。3時間は長いけど、宗教が今より身近に密着して苦しい生活ながらも、ほぼ自給自足で周りと助け合い、アヒルや豚を命を頂きながら生きていく彼らの生活は、今の生活よりも地に足がつき、生死が隣り合い、逞しいと思った。アヒルや豚の解体シーンは怖いけど、何か考えさせる。
地主に搾取される小作人たちの暮らしを自然光のみで淡々と映す前半を乗り越えるのに数日かかった。突然鶏や豚の屠殺シーンが飛び込んできて、のんびり見ていて冷水を浴びせられた気分になる。

自然光のみなので全体的に画面が暗い。日中の明るい部屋で見ていたけど相性が悪いことに気づき、夜に見直すことにした。ディスプレイの輝度もかなり上げた。

養育費の援助が受けられるから出産せずに養子を迎えたり、貧困を運命と受け入れる村人たちが印象的だった。

搾取される現実に抗うことのないようキリスト教が貧困層をうまくコントロールしている。それでも彼らにとって神は唯一の心の拠り所。
時代の流れにより政治に利用されるようになったキリスト教の深い闇を見た。

宗教については明確なテーマではなく、強いメッセージというわけではない。
信心を持つこと、その対象の神様の在り方への問いはキリスト教圏では禁忌にも近いので、少しにおわせるというのが最適解なのかもしれない。

封建社会、民主運動、宗教、恋、可愛い少年、映像美と、さまざまな要素があり、見る人によって受ける印象の比重も異なる。また見るタイミングによっても大きく変わってくる深みのある映画だと思う。

バッハのパイプオルガンの音色が彼らの清貧な魂を崇高に映し、清貧ゆえの不条理な運命に悲愴感を漂わせている。

ベルガモ近郊の貧しい小作人親子。息子のために木靴を作ろうとした父親は、ポプラの木を切り…。

絵画的な映像、最小限のセリフだけど厳しい…。
農村の小作人たちの営みを静かに追ったドラマ。

変革の波を感じながらも、一本の樹さえ自由にならない境遇を訴えています。

信仰心の厚い映画でもあり、絶えず流れる鐘の音とバッハの音楽が雄弁です。

78年カンヌ映画祭パルム・ドール受賞。
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