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真実 特別編集版のQTakaのレビュー・感想・評価

真実 特別編集版(2019年製作の映画)
3.0
是枝映画は、フランスでも同じだった。
それは、家族の姿を魅せていた。
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家族の情景
女優と娘は、役柄と台詞でコミュニケーションする。
側から見ると奇妙だが、彼らにはそれが日常。
そんな彼らにとっての「真実」とは。
ラストシーン。
遠く、列車の走る音を聞く。
庭を覆う木々の葉が落ち、秋が深くなっていた。
「近くに線路があった?」
「葉が落ちると、よく聞こえるの。」
この会話から、この物語の舞台を俯瞰する視点が開ける。
そして、家族は歩き始める。
その姿を見下ろすカットは、誰の視点か。
このシーンに繋がる場面で、家族のわだかまりが一つ解ける。
失った過去へ向き合い、今、家族と共に有る自分を受け止めた。
大女優の大女優たる本領がここにあった気がする。
すなわち、自分が演ずべき役割を、フッと納得し受け入れ、演じきったのだと。
この家族にして、このエンディングなのかとおも思えた。
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大女優と当世の名優たちを集めたスクリーンでも、是枝裕和監督は、いつもと同じように”家族”を魅せてくれた。
私は、この映画を鑑賞する前に大失敗をしてしまったのが悔やまれる。
この映画の宿命か、メイキングやインタビュー番組がいくつか有ったのだが、それを見てしまった。
特徴的なシーンについて、その撮影秘話的な話がそこに有った。
これは見るべきじゃなかった。
後悔してもしょうがないけどね。
映画は、前情報無しに、劇場で一発勝負で向き合うものだと痛感させられた。
見た後に、原作にあたろうが、解説を聞こうが、インタビュー記事を読もうが、なんでもできる。
でも、映画を見る前は、全てが良くない。
予め知っておくのは、是枝裕和監督が家族の姿を撮ったのだということだけでよかった。
これは、教訓として覚えておこう。
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