うにたべたい

大仏廻国のうにたべたいのレビュー・感想・評価

大仏廻国(2019年製作の映画)
3.0
キングコング公開の翌年にあたる1934年に作成された伝説的特撮映画"大仏廻国"をリメイクした作品です。
ただし、単純に同じストーリーで作り直したわけではなく、舞台は現代になっており、"大仏廻国"であった出来事は過去に起きた事件ということで登場します。
元作品はフィルムが焼失して現存せず、当時本作を観た人もほぼ生存していません。
そんな中で、現存する資料から読み解き、何を表現したかったのか、どういったテーマの作品だったのかを、現代に蘇らせようとした作品といえると思います。

なお、本作のDVDは2022年7月現在海外でしか販売されていないです。
そのため、海外で販売されているものを輸入して購入、視聴しています。

本作の主人公は映像制作会社のディレクター「村田」です。
彼は、過去に大仏が動いたという事件を知って、それをネタに番組作りをしようとします。
その取材のために愛知県の聚楽園大仏の元に訪れるが、そこで妙な幻覚、あるいは妄想、過去の出来事のフラッシュバックのような映像が流れます。
取材を終えて居眠りをしていた村田が目覚めると、目に飛び込んできたのは茨城県の巨大大仏が動いているというニュースだったというあらすじです。

元作品は要約すると、聚楽園大仏が動いて愛知の観光名所を巡った後、地獄を巡って、最後には雲に乗って東京に向かうという奇天烈な話です。
監督の横川寛人氏は、本作を戦争による緊張や、その頃に度々発生していた、三原山での連続投身自殺が背景にあるとして、現代社会にも通じる作品であるとしています。
不安定な現在の情勢や人々の心理状態が込められているそうなのですが、正直なところ、本作だけで読み解くことは困難で、解説が必要な作品です。
巨大な大仏が歩き回るというなんとも愉快な展開ですが、内容にコメディ要素は一切なく、暗くて真面目な展開でした。

元作品の大仏開国では聚楽園大仏が動き回りますが、本作では"茨城県の巨大大仏・米山大仏"が動き回るという設定です。
大仏のポーズ、初期位置から恐らく牛久大仏がモデルだと思います。
牛久大仏といえば全長120メートルの世界最大のブロンズ立像ですね。
そんな巨大大仏が歩き回るので、ビルは破壊され、道路は踏み荒らされて、街も畑もめちゃくちゃになると思いきや、そういう特撮映像はありませんでした。
戦闘機の出動も無く、「ブロンズ像だから砲撃で壊せるのでは」と地対地ミサイルを発射するシーンも無いです。
私的には、怪獣特撮的なイメージで視聴を初めたので、そういう意味では期待外れでした。

ただ、恐らく元作品の大仏廻国でも、愛知の街を大仏は破壊して歩いたわけではなく、原作リスペクトの結果だと思います。
元作品で大仏を歩かせた意図、その裏にあった世相を研究して作られた感じがあって、作品として好感を持ちました。
面白かったかというとなんとも言えないとことろがあります。玄人向けの作品だと思います。