ちちゃんちちゃんち

カモン カモンのちちゃんちちゃんちのネタバレレビュー・内容・結末

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

わたしたちの心の入り組んだ部分を、そのままにやさしく慈しんでくれるひと。伝える難しさと同時に、対話するよろこびを、豊かなモノクロームの街並みから学ぶ。すべての感覚を研ぎ澄ませ、何をも洩らさずに受け止めるのに要るのは、愛だの尊敬だの。ブラブラブラ~だとしても。たぶん間違いなく。もののあわれでも聴いて帰ろう。もっと話がしたい。

アフタートークの前に帰ろうかと思うほど美しいままに残したかったのだけど、この映画は、きっかけのための作品だ。お仕着せのハッシュタグではなく、よく反芻し、噛み砕き、あなたの言葉で拡めてほしいという言葉がとても誠実で嬉しかった。届け方や出会い方も含めての映画体験と教えてもらった気分だ。素敵な機会をありがとうございました。





過去の映画群の文脈を踏まえた上で理想を唱えている印象。(やっぱりおうちがいちばん)、車で区切られコミュニケーションの渋滞するLA→人と人とが生身でぶつかり合うNY、こどもとおとなのロードムービー。男性1人による育児コメディものは古臭い作品ばかりだが、流石のフェミニスト具合。性別や立場を超えた助け合いや、対等な会話を可能にする思いやりを丁寧に追っている。
言葉のひとつひとつを軽んじない。何を忘れ何を思い出すとしても、この記録は"平凡を不滅に"する。個の強さを求められるアメリカという国、私たちの生きる2022年を、繋がりを以てして共に乗り越えようというメッセージはアメリカンユートピアや、うつくしい絵本はsoulとも通じる。明瞭だからこそ普遍。傑作。