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カモン カモンのみのネタバレレビュー・内容・結末

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

filmarksの試写会、ユーロスペースにて。


予告の後間髪入れずに始まった本編に「なんて明るいモノクロ映画だろう」と驚いた。カラー映画と遜色ない光(=色)を感じた。
白黒映画は苦手だな、と思う人も淡いコントラストのC'mon C'monなら観られるかもしれない。


子供は完全に被保護者であり、私たちはすべての子たちに安全を提供しなくてはならない。
それ故に大きくパワーバランスが傾きがちだが、対等に扱うことが重要だ。(少なくとも泣くことに罪悪感を感じたり、相手の話を聴いて受け入れたり、感情コントロールする術を持つジェシーは既に大人だった。)
沢山の子供達にしているようにインタビューしても、ジェシーとはすんなり仲良くなれない。相手に良かれと思って隠し事をしても、「好きではないんだ」と勘違いされてしまう。驚きぶつかり苛立ち見つめ合い拒絶し和解し受け入れ、時には一緒に叫ぶことで親友になっていく素晴らしい映画だった。

また母親との関係にも掘り下げられており、彼は親は完璧な存在だと思っていたのだろう。母親が弱った時のせん妄には付き合えど、ジェシーのおままごとには抵抗感があるところから伺える。
親は完璧ではない、努力して親であってくれたことを自分が保護者になって初めて実感するんだろう。どんなに人から教わっていても、物語から学んでいても、残念ながら未だ本当の意味での実感はできていないのだと思う。
私は偶然にも子供とほぼ関わらずに生きている故に、人間としての成長のチャンスを逃しているのかもしれない。

マイクで拾うスケートボードの音、話し声や雑踏、さまざまな音量で流れるクラシックなど音に集中して観ることの出来る、派手さはないが映画館で観るべき映画であった。モノクロームであることが効果的で全く単調ではない、映画というコンテンツを愛している映像だという印象を受けた。


試写会後のトークイベントは、(当然だが)ディスカッションではなく登壇者の話を一方的に聴く場であるため拝聴するか少し悩んでいた。
自分の中にあった靄のような微かな気持ちが、自分の気持ちと微妙に違う他人の言葉で言語化されてそれが正解と感じてしまうことがある為である。
そっと見回してみると席はほぼ満員で、年齢の差も(若い人が多かった)、性差なども、所属の差も違いは沢山あれど、全員映画好きであるんだと思うと嬉しさで身震いがした。同じ場を共有できて最後までいることに決めてとても良かった。

トークイベントの内容やインタビューの資料のサマリーではなく、「自分の言葉で伝えて下さい」と仰ってくれた通り、自身の言葉で映画の魅力を伝えられていれば幸いである。
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