たけひろ

カモン カモンのたけひろのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.0
ある種、宇宙人である9歳の甥っ子と、ラジオのジャーナリストでインタビュアーの伯父さん。

マイクや録音機の存在が無くても、インタビューの仕事でなくても、きちんと向き合って対話し、信頼関係を築いてゆけるのだろうか。

対話と信頼関係。

私は「あれはなんでこーなの?」「これはなんであーなの?」と四六時中、母に質問しまくる子供だったようで、その全てに答える母の様子を姑である祖母が感心し、「偉いわねえ」と褒めてくれた、と大人になってから聞かされた。

逆に言えば、祖母が呆れるほど、質問攻めする子供だったのだろう、私は。

今思うと、状況によっては鬱陶しいこともあっただろうに、適当にあしらうことなく、たくさんの質問にちゃんと答えてくれた母には、感謝の気持ちで一杯になる。

そんな対話の歴史があるから、私は母を信頼してるのだと、思い至った。

たとえ、弱く取り乱した姿を露呈したとしても、時には情けなく、揺らぐことがあったとしても、大丈夫なんかじゃないお互いを受け入れて、笑い合える関係。

素晴らしいじゃないか。

他の作品でもそうであるように、マイク・ミルズ監督は、正直で、優しく、繊細。

本作でも、人間の複雑な多面性と豊かな心情の機微を、美しく丁寧に描いていた。

彼の作品を観るといつも、人に優しくありたいという気持ちになる。

甥っ子のジェシーを演じたウディ・ノーマン。

ティモシー・シャラメが憧れ、とのことだけれど、彼はきっと越える。

その才能に驚かされたし、可愛くて、知的で、最高に魅力的だった。

彼との共演、ホアキン・フェニックスは楽しくて仕方なかっただろうな。
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