ある種、宇宙人である9歳の甥っ子と、ラジオのジャーナリストでインタビュアーの伯父さん。
マイクや録音機の存在が無くても、インタビューの仕事でなくても、きちんと向き合って対話し、信頼関係を築いてゆけるのだろうか。
対話と信頼関係。
私は「あれはなんでこーなの?」「これはなんであーなの?」と四六時中、母に質問しまくる子供だったようで、その全てに答える母の様子を姑である祖母が感心し、「偉いわねえ」と褒めてくれた、と大人になってから聞かされた。
逆に言えば、祖母が呆れるほど、質問攻めする子供だったのだろう、私は。
今思うと、状況によっては鬱陶しいこともあっただろうに、適当にあしらうことなく、たくさんの質問にちゃんと答えてくれた母には、感謝の気持ちで一杯になる。
そんな対話の歴史があるから、私は母を信頼してるのだと、思い至った。
たとえ、弱く取り乱した姿を露呈したとしても、時には情けなく、揺らぐことがあったとしても、大丈夫なんかじゃないお互いを受け入れて、笑い合える関係。
素晴らしいじゃないか。
他の作品でもそうであるように、マイク・ミルズ監督は、正直で、優しく、繊細。
本作でも、人間の複雑な多面性と豊かな心情の機微を、美しく丁寧に描いていた。
彼の作品を観るといつも、人に優しくありたいという気持ちになる。
甥っ子のジェシーを演じたウディ・ノーマン。
ティモシー・シャラメが憧れ、とのことだけれど、彼はきっと越える。
その才能に驚かされたし、可愛くて、知的で、最高に魅力的だった。
彼との共演、ホアキン・フェニックスは楽しくて仕方なかっただろうな。