おぱん

カモン カモンのおぱんのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.2
平凡なものを不滅にするから録音が好きって言ってたのが良かった。自分の中に残しておきたい日常の些細な記憶や体験も、日々の積み重ねでどんどん曖昧になってしまう。大切にしたいのってそういうときの感情だったりするのに、生活に必死になるとすぐに悲しみや怒りで上書きされる。穏やかな心で生きていたいね。どんな時に感情があふれるか、何に怒っているのか、将来について、死んだ後はどうなると思うか。子供たちへのインタビューは哲学対話を思い出した。

中盤で、母は僕について理解できないし、僕も母についてわからない、でもそれでいい と男の子が言う。わたしが親も他人でひとりの人間だと理解できたのはいつだろう。小さい頃に大切に育てていた たまごっち が死んで三日三晩泣き続けてしまい、先週祖父が亡くなった時はケロッとしていたのにどうしてなんだと怒られたことがあった。感情は制御できないし他人の気持ちは測れない、それでも理解しようと歩み寄ることはできる(できないこともある)。人と関わるって難しい。

幼い男の子が自身のタトゥーについて聞かれた時に 教えない と答えていて、大切なことをわかっていてそれをきちんと自分の心にしまっているのは尊くてほんとに良かった。インタビュアーもそう言ってた。

映像は白黒だと光の輪郭が浮かんで画が全部やさしくなる気がした。情報がシンプルになるから表情や動きから感情がしっかり入ってくる。俯瞰で撮られた高速道路の光たち、電気スタンドに照らされながら話す2人の表情、並んで歩くNYの街並み、全部に愛しさを感じた