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カモン カモンのOscarGrooveのネタバレレビュー・内容・結末

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

大人が親としての愛情を注げるようになるには子供と向き合わなければ変化できないのかも。とってもイヤな言い方をすると「子供を持って初めて人間と言える」みたいな昭和っぽい考え方ってあるけど、観てるときたびたび頭に横切ったな。
ホアキン・フェニックス演じるジョニーは、何らかのラジオのジャーナリストらしく、アメリカ各地の子供に世界の将来についてインタビューしていくのを生業としている。あんまり語られないけど。コミュニケーションに難のある幼い甥と暮らすことになった独身男性であるジョニーが子供と寄り添って成長していくのをドキュメンタリータッチに描いている。
これは年齢とか直面する人生のステージによって視点が違うだろうなと思う。
子供は守ってくれる対象を品定めする権利があるので鋭い視点を持つこと、生業にしてる子供へのインタビューは世界の将来について尋ねるというもの、そして独身男性が実際に血縁の子供と生活をするということがどういう現実か、という三すくみの話に感じた。
子供と向き合うことに限らずだけど、きちんと向き合うということは自身の傷や負い目を晒さなければ理解は示されないということなんだなと。相手はよく見ている。わたし個人の考えだけど独身男性はそういうのは目を逸らして仕事にプライドを保ちがちなのはまた家庭的な考えからの逃避でもあるよな〜と思ったり。
インタビューをする子供たちは総じて、世界の未来に希望を持っていた。インタビュアーは対象の直面する逃れられない現実を切り取ることはできてもそれ自体からは一線置いた立場にあること、そして自身の直面する人生のステージに伴う苦労は子供という未来に繋いでいくということ。その営みのスケールはひとつの家庭の話ではなく人類史に及ぶという風に感じた。
ひとつのクライマックスとしてだけど、そうした生活に別れの兆しを察した甥のメンタルが不安定になったシーン。大人は弱さを隠すのではなく曝け出すことで子供と寄り添うことが出来たけど、それが子供に教わったことであるということ。戸惑いを隠すのが間違えないことではないよなと。言葉だけでは伝わらないなら取り乱せばいいんだよなと思って感動した。それは大人とか子供とか関係ないよ。それが寄り添うということで、孤立させないための行動であり、愛だよなと。
そうしたことを優しく感じ取れる作品だったからモノクロの世界に希望を見出すことができるのかもなと思ったな。良い作品でした。
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