Gaku

カモン カモンのGakuのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.2
 デトロイトにラジオ番組の音源を取りに来ていたジョニーは久しぶりに、母の死をきっかけにやや疎遠になっていた妹のヴィヴと電話で話す。ヴィヴは9歳の息子ジェシーを育てながら、双極性障害の別居中の夫ポールとの問題も抱えている。ジョニーはニ、三日という約束でヴィヴとジェシーのいるロスを訪ね、ヴィヴの代わりに甥っ子ジェシーの面倒を見るのだが。。。
 全編モノクロームのフィルムで撮影され、音楽が心地よい。ジョニーの機材を使ってロスの海辺やニューヨーク、ニューオーリンズの街々の音を追っかけていくジェシーによって、ジョニーは、そして観客は子どもの視線と耳とで世界を味わう。ジェシー役のウッディ・ノーマンも、ヴィヴ役のギャビー・ホフマンもそれぞれに素敵な演技で、心に迫ってくるものがあったが、真にすごいのはやはりホアキン・フェニックスだろう。ホアキンの『ザ・マスター』などの、本当に社会性のない、なにかしら必要な人間性が抜け落ちた個性が、今回の映画で、それがあらためて埋められ、再生していく様子がまざまざと感じ取ることができた。いやはやすごい役者である。
 子どもを自分たちの世界の中に受け止める、大切な、大切な、「いまこの瞬間を覚えている」べきための映画。
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