Automne

カモン カモンのAutomneのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.5
余韻が素晴らしかった。
先のことは分からないけど、生きてゆく。
先へ先へと言うのは日本語にするとすごく進歩的な言葉だと思うのだけれど、英語はC'mon C'monなのが"一緒に行こうよ"って感じがして、愛があって好き。

ドキュメンタリー要素がより強くなっている本作、子どもへのインタビューがどこまでセリフなのか、あるいはそのままの言葉なのか分からないけれど、エンドロールを体感すると、ピュアな言葉を取りこぼさないように、という優しさを感じた。

端正で静謐で、モノクロのシンプルな世界、しっとりと情感のある作風はじわじわ響いてくる良さ。
子どもが生まれたり、子育てをした経験のあるひとにはより一層響くような気がしてならない。
私自身はどちらかといえばまだ子どもだから、遠い未来に子どもを育てたらまた見返したいなと思った。

映画それ自体の話となると、A24は相変わらずアンテナの速さ全開で変わらず、たとえばジェシーが持ち出してくる学術論文の数々が、擦られたものでなくてとても最新のものを踏襲していたりするところ。

・樹木と粘菌の話→最近の研究で、植物どうしが言語外で粘菌を利用してコミュニケーションしてることが判明している。
例:ひとつの木に葉を食べる虫が発生したら、指令を出してその虫を捕食する虫を呼び寄せるような甘い香りを発する。樹々どうしの人間にはわからない粘菌コミュニケーション。

・人生うんぬんの話→すごく意識の高くピュアなことを台詞で何度も繰り返しているのだけど、これらは瞑想のカルチャーから来ているのは言うまでもないだろう。Google社員が瞑想を義務付けられてるとか、シリコンバレーのよい良い生き方のこと。
夫が精神病だったり、妻がシングルマザーに近い動きをしていたり、擬似家族やジェシーの発達障害(知的には歪な成長をしているのでたぶんギフテッド)な感じ、これらすべて"生きづらさ"というテーマにある。

・陰謀論うんぬんの話→言うまでもなく大統領選挙前後で力をもったQアノンとかそのあたりのこと。現在ではトランプ政権のSNSマーケティングの一環だったという証拠が出てきているが、未だに陰謀論を信奉するひとは少なくない。あのシーンで言いたかったのは陰謀論者が子どもっぽいみたいなことでなくて、ピュアな人ほどハマりやすんだよ、的なことかと思った。

↑他にも何個かあったけれど、本筋の余韻がすごくて忘れてしまった。

分かり合うことは難しいし、人生は長いようで短い。ジェシーが大人になったとき、世界はカラフルになって、本の中の"向こう側"に直面することになる。それまでの色褪せたように見える想い出自体がこの映画で、もしかしたら未来で大人になったジェシーが想い起こしているのかもしれなくて。そんなメタ味が素晴らしかった。

エンドロール終わりかけ最後の声がジェシーとお母さんの声だったの、聞き逃さなかったよ。

良作です🫰
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