りょう

カモン カモンのりょうのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.2
9歳の男の子も9年人生を歩んでる人であって、大人が他の人を理解できないのと一緒で、子どもを理解して思い通りにしようというのが思い上がりなのかもしれない。

きっと大人と同じように恥ずかしいし、ムカつくし、寂しいし。大人同士だってちゃんと理解し合えないのに、子どもが考えることならお見通しなんてことはないんじゃないか。

大人は子供に比べて長く生きている分、「経験」が積み重なっていて、その経験を通して物事を見てしまうのかな。そうなると目の前で起こったことに頭の中で勝手に方程式を作って、こうすべきって導き出すし、その方程式が勝手に相手の気持ちを慮って、奥歯に物が挟まった物言いになったり、何も言わなかったり。

ジェシーの真っ直ぐな「なんで?」という疑問はそういうフィルターを通さない投げかけだから、逆に大人は戸惑っちゃうのかな。

じゃあ分からないもの同士が少しでも分かりあおうと思ったら、ジョニーとジェシーのようにたくさん話したり、怒ったり、目を見て謝ったり、気持ちを表現し合うことが大事なのかな。大人同士は一度衝突すると相当なきっかけがないと仲直りできないのもきっとそういうことなんだな。

ジェシーと過ごすことで、結局妹との微妙な関係も修復できたってところが素晴らしい。それと大人が子供を見ているようで、実は子供が大人をしっかり見ているという意味で、「そして父になる」を思い出した。

全体を包み込むBGMも優しくて、またモノクロであることが色んな情報を排除して、登場人物の会話やインタビュー相手の言葉にフォーカスさせてもらっているようだった。
それとカモンカモンという言葉が「先へ、先へ」っていう日本語訳になっていたのもよかったな。

悩み事のほとんどは人間関係で、相手を理解できないことの方が多いけど、ふと立ち止まって優しい気持ちにセットし直せる、そんな作品でした。
りょう

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