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カモン カモンのkuuのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.2
『カモン カモン』
原題 C'mon C'mon.
検討された別のタイトルは『Magnetic Fields』だったそうです。
映倫区分 G.
製作年 2021年。上映時間 108分。
マイク・ミルズ監督が、ホアキン・フェニックスを主演に、突然始まった共同生活に戸惑いながらも歩み寄っていく主人公と甥っ子の日々を、美しいモノクロームの映像とともに描いたヒューマンドラマ。
フェニックスが、一転して子どもに振り回される役どころを軽やかに演じた。ジェシー役は新星ウッディ・ノーマン。

人類には欠陥がある。
本当に完璧な人なんてひとりもいない。
何しろ、我々は地球を破壊し、
ある人々を貧困と抑圧に服従させ、
自分たちと異なる人々を怪しげに軽んじているのやから。
しかし、それでも人類は、知的で、思いやりがあり、愛に溢れ、大切な人のためなら何でもする人々で溢れてる。
人類についてポジティブな気持ちになったことはあまりないが、視聴後、希望的観測も持てる余地はあるのかなぁと感じた。
今作品は、ホアキン・フェニックスが最高の俳優のひとりであることをさらに証明する一方で、最高レベルの輝かしい脇役の演技も含まれています。
これほど純粋でリアルな人間関係、そして日常生活に関する不思議なことが存分に描かれた映画が、画面の存在を越えることはめったにない。
フェニックスは、アメリカのある都市を訪れ、若者たちに自分たちの人生観、自分たちの世代の未来、そして人類全般のあり方についてインタビューするドキュメンタリー映画監督を演じている。
映画は、現代の子供たちが自分たちの世代に残された地球のあり方について希望と不安を語るモンタージュで始まり、その中で、これらのインタビューが繰り返され、個人的な物語に必要な視点を与えている。
フェニックス演じるジョニーは、母親であるジョニーの姉(ギャビー・ホフマン)が重度の双極性障害の夫(スクート・マクネイリー)の世話をするために、家に残された甥のジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒を見るためにインタビューから遠ざかることになる。
しかし、ジョニーは仕事の取材でニューヨークに戻らなければならない。そこで、母親を困らせながらも、ジェシーを連れてニューヨークに行くことにし、自分探しと気づきに満ちたロードトリップが始まる。
マイク・ミルズが監督と脚本を務めた今作品は、2016年の『20世紀女性』以来の作品で、視聴者に待つ価値のある体験を提供してくれます。
ミルズはモノクロで撮影しているが、体験から何かが欠けていると感じることは一度もなかった。
むしろロビー・ライアンによる豪華な撮影によって、各ショットのディテールがより際立ってた。ミルズはで、最近高い評価を得た他のヒット作と同様に、他にはない時代に語りかけるヒューマンストーリーを描くことができることを証明したと個人的には思います。
今作品は、不安定で分裂した今日の風景にぴったりで、あらゆる苦難にもかかわらず、共感というポジティブなメッセージを伝えるために、雑音を切り裂いている。
登場人物のユニークな体験は、とても地に足がついていて、映画を見ることは、まるで彼らと実際に会うことに等しいと感じました。
ミルズ監督のキャラは皆、エネルギーを奪われるような激しい闘争に直面しているが、それでも耐え忍び、愛する人たちとの小さな瞬間に幸せを見いだしている。
たとえばジョニーは、喪失感にさいなまれながら、最近離婚して一人ぼっちになってしまった。フェニックスは、この役をいつものように巧みに演じ、深い感情の複雑さを過剰に演出することなく、またそれをリアルに感じさせもせず、キャラに余裕を与えている。
一方、ジョニーの甥であるジェシーは、父親が精神的に問題を抱えており、母親がその世話をするために不在にしなければならないという事実に対処しなければならない。
ジェシー役のウッディ・ノーマンは、12歳の俳優に対するあらゆる期待を裏切り、事あるごとにフェニックスからシーンを奪っていく。
今作品で印象に残ったもうひとつのテーマは、ミルズは母親を社会のヒーローとして強調している点かな。
社会の若者を育て、次の世代を形成する仕事の多くは母親たちに委ねられており、彼らは時に翌日を迎えるためだけに地獄を見る。
ジェシーの母親ヴィヴを演じたギャビー・ホフマンは、今作品では格別な存在でした。
親であることのストレスと絶え間ない疲労が彼女の素晴らしい演技から感じられ、脚本が彼女の犠牲を強調する方法は気高く、心温まるもので、多くの人が自分の人生の中で母親に感謝したくなるものである。
登場人物の苦悩を強調するだけでなく、人とのつながりや幸せの発見、人生の意味の創造といった人間共通の苦悩に対する共感と希望を表現しているのは輝いてる。
およそ15パーセントのドキュメンタリーと85パーセントのドラマで構成されているので、ジョニーやジェシーをはじめとする登場人物たちが直面する苦難が、明日の大人たちの目を通して雄弁に語られてた。
その結果、登場人物たちはフィクションの域を超え、街で遭遇するような問題を抱えた普通の人々の器となる。
見終わったとき、人類の未来と街を歩く日常人について楽観的な気持ちになり、映画にこれ以上望むものはないと思いましたし、めったに見られないようなリアリティを観客に植え付ける。映画作りの真髄をこれほどまでに凝縮した効果は、他にあまり見かけないです。

余談ですが、
今作品に登場したテキストは以下の通りです。

アンドレア・ネイル著『親子関係修復のためのハウツーガイド』
"A How-To Guide to Parent-Child Relationship Repair" by Andrea Nair,

キルスティン・ジョンソン著『撮影者が可能にすることの不完全なリスト』
"An Incomplete List of What the Cameraperson Enables" by Kirsten Johnson,

アンジェラ・アン・ホロウェイ著 『双極熊の家族』
双極性障害を持った母熊のことを理解しようとする子熊の奮闘を描いた物語。
"The Bipolar Bear Family: When a Parent Has Bipolar Disorder" by Angela Ann Holloway,

ジャクリーン・ローズ著 『母親たち』
母親の愛情と母性の残酷さについて思索をまとめた一冊。
Mothers: An Essay on Love and Cruelty" by Jacqueline Rose,

クレア・A・ニヴォラ 『星の子ども』
児童文学。
"Star Child" by Claire A. Nivola,

L・フランク・ボーム著『オズの魔法使い』
児童文学。
"The Wizard of Oz" by L. Frank Baum.

児童文学意外は日本語翻訳版はないかもしれませんが、参考までに。
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