白黒ですが、とにかく全ての画面が美しくて見とれてしまいました。はっきりとは分かりませんが、色彩の情報がないことで、完璧にきまった構図がより強調されて見えたことが理由のひとつかもしれません。そこに重なる人々の言葉の断片たち。ぼーっと眺めてるだけでも満足できそうな作品ですが、それは許してくれません。
他人を分かることの難しさ。現状をコントロールすることの難しさ。そして自分を見つめることの難しさ。そんな人生の難しさ、というかほぼ不可能性を見せられた気がします。期待した答えを言ってくれず、大人がコントロールできない甥っ子ジェシーの存在がそれを象徴しているようでした。
そんな現実の中で、登場人物たちは決して立ち止まりません。ジョニーは甥とあきらめずにコミュニケーションを取り続けます。でも大きなドラマが起こって劇的に2人の関係が変わることはありません。結局は分かりあうことはできない。それでもほんのわずかではありますが、彼らの中に変化が起きてきます。そのかすかな変化が、とても愛おしくて美しいと感じました。
普段仕事で人に質問する側で、自分を伝えるのが下手なジョニーが、甥との会話で逆の立場に立ち、自分と向き合う。ラストで響いてくるの子供たちの言葉が、ジョニーの変化を見たことでかなり違ったものに聞こえてきましてた。
