いかちき

カモン カモンのいかちきのネタバレレビュー・内容・結末

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

モノクロームの映像。無骨な伯父と風変わりな9歳の甥の物語。
甥ジェシーが本当にややこしい。
私自身は息子の子育てをあまり苦労に感じることがなかったので、母ヴィヴが気に病む様子に気を揉んだ。
が、ふと思い出したのが私の母の「あなたを育てるのは本当に大変だった」という言葉だ。
確かに。私はジェシーに似ていた。空想癖がひどいし放っておくと際限なく喋り続ける。急に立ち止まったり走り出したり落ち着きがない。ふらっといなくなる。病気になるし迷子になるし怪我もした。でも怒られた記憶がない。それは怒られなかったわけではなく、親が怒っていることが理解できなくて記憶していないのだ。
まぁそんなことは置いておいて、突然そんな甥と暮らすことになった伯父ジョニー役のホアキンフェニックスが良い。
二人はジョニーの仕事である録音で繋がり、ぎくしゃくしていた妹ヴィヴとは電話で繋がる。
不器用だけど真摯に少しずつさぐり触れ合う人と人が愛おしい。

ロサンゼルスからニューヨーク、デトロイト、そしてニューオリンズと二人のロードムービーであり、その街々で若者や子どもにインタビューするというドキュメンタリーでもあることも二人に魔法をかけている。
でも結局ジェシーの「ウンチしたい」に持っていかれてしまったけど。

怒られたことは覚えていなくても教えられたことは覚えている。
それが大人になって糧になっている。
話をする。声を聞く。
モノクロームの映像の中でとつとつと繰り広げられる会話が染みた。
いかちき

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