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カモン カモンのmizukiのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.5
本作は、誰がみても親近感が湧いたり、何か引っ掛かったりするように作られているんだろうけど、自分の話かな?っていう場面が本当に多かった…。感情豊かな両親のもとで長い間一人っ子だったこととか、いわゆるHSP的な特性をもつ中で過ごした幼少期とか、変わってる伯父(写真や映像専攻だった)と遊んだこととか、結構重なった。あとは、年の離れた兄弟ができてからは保護者としての立ち回りもものすごく考えるようになったから、あのお母さんや伯父が振り回されていることにも共感しちゃう。

挙げたらキリがないのだけど〜…
まずあの子の内面でわかる点は、とにかく過敏だから、好奇心も恐怖心も人一倍あるってことかなあ。変わった子だから、一見天才児?って感じの振る舞いに見えるかもだけど、自分の実体験から考慮すると、敏感なだけ。親の育て方とか全く関係なくて、生まれつき外部刺激をもろに受ける(劇中でも、白砂糖を摂ると体内の単糖の濃度が一気に上がることが刺激になり夜眠れなくなる、というシーンがあった ちなみに私も割とそう)。とにかく頭に流れ込む情報が多すぎる。人のキャパは高が知れているので、インプットが多いだけなら誇れない。処理できなきゃ意味ないんだよね(私は無理です)。あの子は頑張って処理してる方だと思う。処理できてるなら天才かも。偉い。
母親の発する生活音から機嫌を想像して気にしてしまうシーンがあったけど、あるあるだよね。無意識に、保育園の送り迎えで手を繋いだ時の手の握り方、手の温度とか、抱きしめる強さ、声音、笑顔の量、笑い方(にこにこなのか、空笑いなのか)などから、、もしかして今こんな気持ちなのかなって勝手に想像して、不安そうだったら私も不安になったり、逆にウキウキしていたら私もウキウキしたり。目の前の人が不機嫌なんじゃないかって思うと、なんとかしなきゃって内心オロオロしちゃう、昔から。おそらく過敏さに翻弄されて不安になって、私も5,6歳くらいのとき、私のこと大事にしてくれてる?って試すために、わざと迷子になったことある(笑)いい大人がそれやるとただのメンヘラなんだけどね。気持ちはめっちゃわかる。

伯父だから、なのかわかんないけど、子供としてより人として見てくれる節があるかなと。私の伯父も、子守ってよりはサンプルの観察みたいな感じだった(笑)「こう言うとこう返してくるんだ、興味深い」って思われてるなってことをわかっていて、一緒に遊んで楽しかった。小学生の頃、実際にカメラを向けられてインタビューされたこともある。実の父親から向けられるカメラは嫌いだったのに、伯父はありのままを受け入れてくれる感じがして嫌じゃなかったなあ(単純に撮るの上手いってのはある)。"子供"として見てないから。この映画の二人と自分の境遇をどうしても重ねて見てしまう。

私はそこまで無知じゃないから、心が綺麗じゃないから知ってる、作中で敢えてピックアップしている境遇を、「不幸」と呼ぶ人がいるってことを……。自分を既に認識できていない認知症の母の介護をしていたこと、精神的に不安定な父親を持っていること、ものすごく繊細な息子を持っていること、など。あれらの境遇にいると、大変だと思う人が多い。それは事実。でも、、だから、、、「こういう人は大変だ」と決めつけていい理由にはならない。「大変かもしれないな」と想像するに留めるべき。
でもやっぱり、本人たちは「不幸じゃない」「平気だ」と言い聞かせているだけで、大変なことは多いんだと思う。平気か平気じゃないかなんて、わかんない。進むしかない、さあ先へ、カモン、カモン、カモン…。相手が、平気じゃないけど「平気」って思いたいってわかったなら、私は敢えて「平気だよ」って言っていきたい。
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