mayumayu

カモン カモンのmayumayuのネタバレレビュー・内容・結末

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

平凡なものを不滅にするって最高にクールだ。

なんか、目が離せない映画だった。面白い、とかわくわくする、とかより、目が離せない。

母の介護の時の意見の相違や、その前からの色々な出来事で、少し微妙な関係になっていた兄妹。妹が家を空けて夫の下にひとりで向かわざるを得なくなり、9歳の甥を預かる事になった兄。
ちょっとクレイマークレイマーを思い出した。でもクレイマークレイマーの方がよりパーソナルな話だった気がする。
9歳のやや不思議ちゃんな甥とのあれこれ、そこに兄の仕事のラジオ番組制作で、移民のこどもにインタビューをアメリカ各地でしているところや、母の介護場面などが挿入される。インタビューのこどもたちの受け答えが挿入される事で、一家族の話だけじゃない映画になっていると思う。
質問が、「未来はどうなってると思う?」とかなためもあるけど、背景さまざまなこどもたちの覚悟や思いが広くて大きく、すでに守られる側でなく守る側だったりして。
‥世界は以前のようにはクリーンでなくなると思う。
‥いつか地球で呼吸や食べることが難しい日がくるとは今は思えない。
‥‥アメリカは平等とはいえない。
‥お父さんには色々問題があって、でもあまり妹には知らせたくない。妹には僕を父や兄かどっちと思ってもいいから頼りにしてほしい。大好きだから。

そして鋭い甥っ子の質問が刺さってくるのだ。9歳のみずみずしい感性の少年は、時々容赦ない質問をおじにしてくる。どうして結婚してないの?どうしてお母さんと話しないの?あまり親しくないのにどうして今ここにいるの?どうしてひとりぼっちなの?あまり感情を表すのが得意じゃないの?

白黒映画にしたのは何故なんだろう。よかったけど。

きちんと甥と向き合い、謝りあった時のホアキン・フェニックスの表情が本当に素敵だった。ホアキンの役はズバリ、甥の言う通り、聞くのは得意でもきっと仕事でないところの個人的な感情やパーソナルな思いを表現したり、近しい人に伝えるのが得意じゃなかったんだろうと思う。甥と過ごすうちに兄も変わっていく。

私が今していることが、100%正しい子育てかなんてわからないけれど、ひとりの人間として接していけたらいい。こちらも色々成長するというか、させてもらうというか、本当にそうだと思う。
思わずそんなふうに我が身も振り返ってしまう。そんな映画だった。
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