サトタカ

カモン カモンのサトタカのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.8
序盤はどうもホアキン・フェニックスの顔から漂うジョーカー感というかグラディエーターのやべぇ奴感が気になってしまい、いかがなものかと思ったが、気がついたら慣れた。さすがの演技力。モノクロ映画にすることで映像よりも音声、人が話す声に集中できるようにしていたのかな。
ホアキン演じるラジオ局のジャーナリストのジョニーが、長いマイクと機材、ヘッドフォンを携えて、各地の子供たちの率直な意見を聞くというのがそもそもおもしろい。
やけにリアルな(クソめんどくさい)9歳の少年ジェシー役のウディ・ノーマンくんの演技は素晴らしかった。本当に自然。髪がくるくるで大きな目でかわいらしい。ただ俺みたいなおっさんが少年をかわいいと思って眺めているとどうも危険な香りというか、犯罪臭が漂っていないか心配になる。
ホアキンは(腹が出てるとはいえ)イケメンで髪がドフサだからまだいいけど。

英国の往年のバンド、ザ・スミスのモリッシーが歌う世界がほんの少し頭をよぎった。「心に茨をもつ少年」とか「チャーミング・マン」みたいなやつ。

マイク・ミルズのふつうの人々の日常に起こる、ちょっとした心の機微を拾いあげる感覚の鋭敏さってやっぱりただ事じゃない。
相手がどんな人であれ、どんなに頑張ってもわかり合えないとわかっていても、真摯に話に耳を傾けることがいかに大切か。
レコーダーやカメラという機械がどれだけ(つまらない)日常を正確に記録し、それを魔法のように輝かせる力があるか、改めて考えさせられた。

実際には、録音した音声や動画を何度も聞き直したり編集したりするのは、びっくりするほど面倒くさくて、撮りっぱなしになるんだけどね。
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