Monisan

カモン カモンのMonisanのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.4
観た。

きっとこれはモノクロじゃないといけないんだと思う。この後、監督の見解とか考察は見るけど。
デトロイト、ロサンゼルス、ニューヨーク、ニューオーリンズ等。モノクロの街の空撮が心地良い。ジェシーは風変わり、だけど時にとても鋭くて対峙する大人を傷つけてしまう事もある。取り扱いも非常に繊細に丁寧に行う必要がある。このモンスターのようなジェシーをモノクロの映像は優しく包んでくれていると感じた。これがもし色彩という情報量の多い映像だったら、自分は観る事でダメージを受けてしまうかもしれない。

ホアキン・フェニックス演じるジェニーが良過ぎる。それに劣らずジェシー役のウッディ・ノーマンの無垢な存在も素晴らしい。

ジェニーが子ども達に未来についてのインタビューをするシーン、全部良い。これは恐らくリアルに行っているのかな、練られていないけど核心をつくような言葉、刺さる。

仕事をしながらジェシーと向き合う、独り身のジェニー。妹でジェシーの母親ヴィヴは苦労しながらも向き合っている。そこへ離れて仕事する夫ポールの精神不調。ジェニーとジェシーの2人の旅が始まる。

インタビューされるより、自分で音を録音する事に興味がわく、ジェシー。NYの街の音を録る姿。印象的。
ドラッグストアで一瞬いなくなり、ジェニーを脅かす。怒るジェニー、脆く崩れてしまうジェシー。ガラスより壊れやすい。

ニューオーリンズ行きの電話をしているとまたもや居なくなる。必死に名前を呼び、見つけるがまたもや心を閉じてしまう。
覚悟を決めてからのジェニーの優しい表情。それに応えてくれるジェシー。お互い謝るシーンは暖かい。

本の引用も幾つかあって、「撮影者ができる不完全なリスト」という取材者に対する注意みたいな本、興味深い。
そして「星の子供」クレア・A・二ヴォラ著、読み聞かせながらジェニーも思わず唸り涙する。"そして星に還る日がきたら不思議な美しい世界との別れがつらくなるだろ…"

お母さんの元に帰れる事がわかった後の
林の中での「僕は大丈夫じゃない!」と叫び合う2人、このシーンとても良い。そしてここもモノクロでヒキ絵だから良いんじゃないかな。

音楽の印象もとても残る。優しく穏やかな綺麗な楽曲が多い、モノクロの映像と同様にこの映画をふんわり包んでくれてるよう。

子どもとの向き合いだけでなく、大人が自身の人生とどう向き合うのかを描いてくれている映画。
未来は考えもしないようなことが起きる、だから先へ進むしかない。どんどん先へ、カモン、カモン、カモン。ここも良かった…

最後はボイスメッセージを送るジェニー。らしくて良い終わり方。
エンドロールはインタビューの音源を流しながら終わっていく。最後まで沢山の言葉をもらえる。

マイク・ミルズ、脚本・監督
Monisan

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