AKANE

カモン カモンのAKANEのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.0
知性よりももっと深い、感覚の底に触れてくるような映画_____ 誰もが抱えるコミュニケーションという難題、人間関係の綻びと修復のストーリーを、ホアキン・フェニックスが9才の甥の少年に振り回される中年男性としてとても愛おしく演じたヒューマンドラマ。みんなだいすきA24作品です。そして登場人物が、認知症の母の介護を通し確執が生まれた兄妹、双極性障害の父親、そんな父を世話する母親を持ち自分も将来そうなるのかもしれないと怯え、母親から離れて暮らすことになった軽度自閉症&発達障害を抱えているような息子(本編では語られない)とかなりヘビーなんですが、それに対してストーリー性は薄く(?!)大部分がたわいもない会話のやり取りで構成され、また白黒映像というところから大衆ウケするように作られた作品ではなく、一部のひとに刺さるメッセージ性の強い作品となっています。だが、それが良い。

私が特に刺さったセリフに
"世の中のありとあらゆる問題は、当然に母親が解決すべきとされている。(母親は個人や政治の失敗、あらゆる問題への究極の生け贄であり、すべてを解説するという不可能な任務を負っている)"というのがあり、たしかに母親は偉大などと言いますが偉大でなければならないように決めつけられている風潮が確かにあるな、と感じました。当たり前すぎて忘れていましたが、作中でも突然父親がいなくなるんですが、ホアキンがその甥の父親ではなく母親的存在になることから、父親はいなくなっても困らないが、母親はいなくなってはダメなんだということが伝わってきました。

大大大大大大前提に、退屈!!な作品ではありますが、既に出来上がってしまっている自分の価値観にない他者の言動を受け入れようとする"きっかけ"を見つけ、生みだすことができる作品だなと感じました。

2009年生まれで6歳にして俳優デビューを果たした弱冠13歳のウディー・ノーマンくん、ホアキン・フェニックスも惚れ込んだ彼の演技をぜひ本作で注目し、観てほしいです。
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