Ginny

ミッドナイトスワンのGinnyのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.3
良いと話題だったけど見に行くきっかけを掴めずにいたら、よく行く映画館では上映終了。
それが好評につき一週間限定再上映とのことだったのでこれを逃したらいけない!と思い鑑賞してきました。

でも楽しめる(?)か不安だし、自信なくて(なんの)朝眠いしもう行くのやめるかと一瞬思ったくらいやる気もなく、好評と聞いてたのに期待値はあまり高くなかった。唯一期待していったのは草彅くんの確かな演技力。

それが。

見始めたら、余計なことを考える暇も隙間もなく『ミッドナイトスワン』の世界にいつのまにか入り込んで彼女たちの演技の機敏が心の奥深くまで届いて揺さぶってきて…信じられないくらい泣きました、涙が止まらなかった。
前半で、です。前半で。

前半の涙は本人なぜ泣いてるか理解できませんでした。

映画を見ていて、「感動の対面に心震えた」「人同士の心のつながりを見て温かい気持ちになった」など泣けるほど感動したシーンには説明がつきます。自分が何の涙を流してるのかわかります。
脳と心が、今までで知ってる感動回路を通ってきたものに感動して涙を流す行為をしています。

でも、この映画ではそれではない泣き方をしました。
今までの人生で映画で見てきた感動回路とは違う鑑賞者への届き方、心の揺さぶり方をする気がします。
だから無意識下でわかるけれど脳で言語化できていなくて、何で泣いてるの?状態になりました。
変なボタン押されたのか?と思ってしまうくらい本人の意思とは関係なく涙がぼたぼた流れてきました。前触れなく急に涙出てくることもありました。初めてマスクが濡れる経験しました。

誰のどこが良かった、このシーンのこれが良かったと言う感想を事前に聞いてこの映画を見ないで欲しいなと思いました。
邪心なくこの映画を感じてほしいからです。
ありのままの貴方としてこの映画に向き合って欲しい気がします。

とんでもなく揺さぶられてショックが抜けません。

映画は作り物なので役者には別の生活がある。
だから映画を見て感情移入をしてショックで…て時も役者さんの普段の姿を見れば気持ちは落ち着かせられます。
あ、元気だ。あ、全然役と違う。
そんな現実との差を見て映画のショックを消すことができます。
でもそれで良いのか?とこの映画を見て思います。

そんな一時的な快楽で終わらせてはいけないのではと思わされます。
この映画がフィクションだとしてもこれに近い現実の苦しみを味わってる人たちがいるはず。
その人たちの苦しみが少しでも軽くなるようにまずみんなが取り組めてやれること、偏見をなくしていきたいと思いました。

それだけじゃ悲しみも苦労も取り除けないだろうけど…。

胸が張り裂けそうに見ていて辛かったです。
どうしたらいいの?悲しいつらい目を背けたい、でも目を逸らしちゃいけない。

時間を忘れるくらい没入して、コントロールがきかない心の奥底にまで訴えかけられた良作でした。

つよぽん本当すごいよ。
『博士と彼女のセオリー』でのエディレッドメインの演技を見たとき こういうのは日本では見れなさそうと思ったけどつよぽんならやれそう。

女性の格好、綺麗だった。
格好も不自然じゃなくて、女性になろうとする男性っぽいチョイスのアンバランスさが表現されていた。男になる時との声音の使い分けも、就職のために男性の格好になっても表情が女性的だったり、とにかく演技が凄かった。
慎吾ちゃんがこれを見て役者はもうやめる(と1日思った)と言ったのよくわかる。こんなの見せられて同業者だったら悔しいとなるよね。
それくらい素晴らしい演技だった。

一果役の子は今作が初演技の新人ということですが映画向きの雰囲気で魅せられるオーラを持っている人なのでこれから業界が大事に育てていって欲しいと思います。

水川あさみ。めちゃめちゃ怖かった( ˃ ⌑ ˂ഃ )
一番最初泣いたの水川あさみが怖くて泣けた( ´•̥ω•̥` ) 演技上手すぎる。・゚(゚⊃ω⊂゚)゚・。

田口トモロヲさん素敵だった。
真飛さんもとても良かった。
映画を作るすべての要素が良かった。
音楽、特にメインテーマ良かった。
ほんと良かった、物語が苦しいけど…。
ロケーションも、部屋一つ一つのセットの作り込みもとても良くて周りの様子を見て興醒めすることもなく質の良い映画でした。

処理しきれないので小説買いました。
これから読もうと思います。

多くの人に見てほしい、素晴らしい映画でした。
Ginny

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