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ミッドナイトスワンのcinemakinoriのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.4



“私怖い?私気持ち悪い?
アンタなんかに一生わかんないわ”




草彅剛のトランスジェンダー役が話題となった本作、ずっと気になりつつも保留にしていたのだが、漸く初鑑賞。

想像以上に重くてしんどいストーリーで驚いたと共に、胸が詰まり泣ける場面が多くてティッシュの消費がエグい。

LGBTQ、そして育児放棄と言ったテーマは【彼らが本気で編むときは】と重なる部分が多い印象だが、生田斗真の可憐で美しい“彼女”を描いたあちらの作品とは対照的に、草彅剛のこちらの作品は美しさに憧れる“彼女”たちの現実的な葛藤と苦難を美化させずに普遍的な問題として真摯に描いている。

ただ、とても深刻で重たい内容にも拘らず、ある意味では娯楽エンタメ性を意識した纏め方をしている点は賛否の分かれるところかも知れない。
※個々に抱える心情の奥行き描写が狭いのがその理由。

マイノリティ且つ普遍的なテーマである一方、まだまだ理解を得られていない問題であるのも事実で、そのエントランスを拡張させると言った意味では、このエンタメ寄りな見せ方と拡散手段は個人的には賛同派。
そこから掘り下げるか受け流すかは、ある意味鑑賞側に委ねられている点で言えば、映画が担う本来の意味に沿っていると私は思うので。







以下↓


⚠️ネタバレ⚠️














それでもやっぱりあのラストは色んな意味で救われない。
実際、術後のケア次第でどれ程までに患部が悪化するのかは存じ上げる由もないが、マイノリティをマジョリティに浸透させて行く一つのブリッジとしての作品とするならば、明るく希望に満ちた終わりのほうが一層幅広い人びとの心に響き、LGBTQで悩みを抱える方々の共感も得られたのではないだろうか。
まぁ、それはそれで「美化させ過ぎだ!」とか「現実はそんなもんじゃない!」とかとアンチコメントが出てくるのだろうが。
表現者と観衆の温度差というものは常に付き纏い永遠に交えないもの。
だからこそ憧れ、だからこそ挙って評価したり批評したりとするわけだろうから。


本作に至っては、それほど繊細なテーマという事なんだなと着地する。
そしてその繊細なテーマに真摯に向き合いつつも、エンターテインメントとして、更には映画としての必要な誇張表現もまた必要だという事だろう。
日曜日の午後のノンフィクション番組とは違うという監督の意図がこの作品のエンタメ性に傾けた拘りで解る。


そんなことを踏まえて、とても意味のある作品だし、色々な人にお薦めしたい作品の一つだなぁと、個人的には強く感じた良作。




そして、この作品の各々の感想を自由に語り合いたい、、、
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