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ミッドナイトスワンのシノのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

良い(良くはないが)話ではあった、けど、良い「映画」ではなかったと思う。
撮りたいシーンありきでそこに向かって作られたストーリーや展開って感じがした。
ネグレクトされていた子供と、トランスジェンダーの男性が一緒に暮らす。これだけでもその日常を丁寧に書いていくだけで映画としては成り立ちそうなものだけど他を盛り込みすぎて設定が過剰な気も。

ひとつひとつのシーンを掘り下げないまま次に移ってそこに対してのフォローもなく、繋がりが見えにくいから撮りたいシーンのツギハギに見えてしまってしんどい、いや良いシーンもあったんだけど…。
だからこそイチカとリンが仲良くなってく、どこかで心を通わせ合う過程がないままキスをして、リンが投身したのもその部分がまるっとなくても話に影響ないし意味の無い死の描写が辛いな。

ナギサの気持ちの変化も母性や愛情に見えるかもだけどそうじゃないと思う。
正直に言えば「なんで私だけ」から来る「私だけじゃないんだ、可哀想なのは」の気持ちの裏付けにするための依存というか。そこに愛情が全くないわけではないだろうけど。
「自分のため」じゃなくて「イチカのバレエのために働く」「イチカの母親になるため手術する」といったように行動の理由を他人に置いてるかつ「女性になりたい自分」の永遠に体験できない「妊娠出産」の擬似体験をして自己肯定感の踏み台にしてるような印象で、それはほんとにイチカにしたら「頼んでない」しトラウマになるだけだよなあ…。

あとホルモン注射(だよね?)週一×一年半通院にしては身体に変化が無さすぎないか?お金貯めてるから行ってないとかの方が自然だったような。草なぎさんは悪くないけど当事者の俳優を起用する所から始められるといいよねそもそも。

服をやぶられてた時インナーやブラがなくいきなり胸丸出しになったり、ボランティアの人が来てくれてる&最近のオムツは高性能なのにあんなに外にまで漏れ出して…みたいな描写とか、ショッキングな絵作りのためにファンタジーが過ぎるもの気になる所。「こうすれば重いだろ、泣くだろ」の丸見え感が「良い映画ではないな」と思う所です。

脚の歪みや怪我の可能性のあるハイヒールを履いてコンクールに向かうイチカもそれ。面影を追うならもっとやりようがあったような…。絵作りを優先しすぎだなと思って、こんな感想です。絶賛が多いから投稿迷いましたが…。
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