MasahideYoshida

ミッドナイトスワンのMasahideYoshidaのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.6
2020年公開
監督 : 内田英治
===
新宿のショーパブで生きるトランスジェンダーが、実母の虐待から引き離された遠い親戚の中学生を引き取る羽目になるお話。

自分のままに生きることがかくも大変な人が、この世にはいるのだという想像力をくれる物語。必ずしも、性的マイノリティだから、貧乏だからということに限らないし、今までそうでなかった人がふとしたきっかけからそうなってしまう可能性だって全然ある=誰しもがその生きづらさの当事者になりうるという想像力。劇中に出てくる、主人公たちを怪物扱いする人間たちに欠如しているその想像力。

途中、主人公は自分そのもののらしさを曲げてでも守りたい、もっと大事なものを見つけられて、それによってある意味、変調をきたしていくのだけど、ではどうすればもっと幸せになれたのか考えると、その難しさが、とても切なく苦しい。

「親に受容されること」の避けられない重たさも、一つテーマなのかもしれない。こんなに本人が選べないのに、こんなに人生を左右するなんて。親ガチャという言葉が生まれてしまうこの時代の生きづらさを、考えてしまう。

これまでの人生で見てこなかった「世界に対しての視点」を擬似体験させてくれる映画が好きなのですが、そういう意味で、とてもいい作品でした。えぐられる。草彅剛、恐るべし。