イッソン

ミッドナイトスワンのイッソンのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

オープニングが赤いシューズの四羽の白鳥のバレエなのですけど、つま先が伸びてない足先でドタドタ踊るのが悲しく、嫌な予感をさせる。
そして、予感どおり悪い夢を見たような映画だった。でも変な魅力があって最後まで見てしまった。

凪沙=草彅剛の頬のこけた顔が演技を超えてる。このキャスティングで映画は成立。

もともと体力的に問題のある凪渚。女性になるために手術したのに失敗。金魚にエサもあげられないほどの容態になるなんて、たまらない。「早くおむつ替えてよ」なんて悲しすぎる。

一果役の服部樹咲。
初めて現れた時の淀んだ表情の瞳がどこまでも底なしに黒く見えて怖い。言葉はなく突然にキレて椅子を投げる。ってことは長い間ほったらかしにされてきたってことだ。彼女は言葉で伝えられないから踊る。
そんな一果が凪沙に出会うことで血が通っていくところがホッとした。
新緑のようにバレエを踊るのが、この映画の救いだった。後ろに脚を上げるアラベスクが特にきれい。

友達のりんが最終的にはダイブしちゃうわけだけど、あれはちょっと飛躍しすぎじゃないかな。それに足が悪くて踊れなくなったのにビュンビュン回っていて矛盾を感じた。
見ている人にショックを与えるために作ったシーンだと思う。自殺じゃなきゃ面白いシーンなんだけど。むしろ、りんがあぐらをかいてタバコを吸う表情が印象に残る。
すべてが嫌になっても一果への思いは純粋さを失わない。

他にもあえて手術シーンを見せたり、内田英治監督はやることがエグい。他のやり方でも手術したことは伝えられると思う。自殺したり手術を失敗したり不幸をあざとく描く。新宿もうす汚い感じのままに。
この監督のスタイルなんだろう。
でも、お金持ちって、あんな感じですか?
貧乏に比べてお金持ちって、描きにくいのかもしれない。