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ミッドナイトスワンのnao22のネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

いい映画なのも、好きな映画なのも絶対わかってたのだけど、そう易々と観ることが出来なかったんです。
そういう映画ほど、暫く引きずる自分の事をよく分かっていますので…。

いつもいつも候補に現れてはスルーしてきたけど、今夜は何故か再生してしまいました。(うっかり!)

一果と凪沙
凪沙と瑞貴
一果とりん
早織と凪沙
一果と早織

それぞれの関係性や抱えるものが繊細に描かれていて、ずっと胸が苦しい。
少女がつま先立ちで舞う姿は、美しくて危うい。ポン、と押したらバランスを崩す踊り子。

滑り出したら止められない、人生の滑り台。

そんな危うさを全ての登場人物が孕んでいるから、バレエ教室の指導者である実花の明るさや芯の強さみたいな物に、随所で安心する。
1人光るヘルシーさ!

凪沙は一果の母親になりたい一心から仕事を探し、男性の姿で不慣れな肉体労働をし、最後は本当の母である早織から一果を取り戻すために女になったが、それも叶わなかった。
心と体を深く病み、孤独と貧困に瀕してしまう。
視力すら失い、一果の頬に触れ彼女だと気がついてから身なりを整えたカットになり『このまま元気になってくれたらいいのに』と思わされた。
そうならない事は目に見えていたけれど。

凪沙は、本当の女性にはなれずにショーパブで踊っていた。
一果という、本物の女性が本物のバレエを舞う姿は、小学生の頃から夢見た凪沙にとっての『女の子』そのもので、大切にしたいと強く思ったのかもしれない。

赤いブーツ、口紅、コート、血、靴散りばめられた赤が訴えかけるようで、視聴者の心のダメージを強くする。
赤は華やかで美しいけれど、血の色で、女の生理の色で、凪沙がおそらく合併症で寝たきりになっているシーンでは痛々しくて、汚いものでもあった。
生でも死でもあり、少女が履くスニーカーでもあり、大人の女が履くハイヒールでもある赤が効果的でした。

俳優陣の演技については絶賛され尽くしてるので今更書くのは辞めました。
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