ピースケ

ミッドナイトスワンのピースケのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

先行上映にて鑑賞
凄かった。痛くて辛くて苦しい。でも深い深い母の愛に包まれる。言葉がうまく出てこない。
自己犠牲の愛のストーリーは今まで苦手でしたが、オリジナル脚本をかかれた内田監督の取材量に裏打された脚本にリアリティーがあって、リアルな痛さ辛さを余す事なく演じ生きるキャスト達。ストーリー・バレエというモチーフの光と影を映像で効果的に映し出し、それを盛り上げる映画音楽の力。そこには本物の、無償の愛の力があり魂を揺さぶられました。また観たい。

公開後再度鑑賞したので追記
以下 ネタバレ含む

 色々と賛否があるってオタ以外も沢山の方が観てくれたんだと主演のオタとしてよろこばしく思います。オタなのでできる子なのは知ってたけどここまで凄いとは!
 
 彼女と同じ位の歳であれば、まして凪沙の様に独りで生きると覚悟している人ならば様々な将来への不安を抱かざるを得ません。例えば終の住処を探す単身者だって同じ、いつまで働けるか分からないのに簡単にローンなんか組めない筈、本当ならタバコも酒も、無駄遣いも止めればきっと早くお金も貯まるだろうに、やめられない弱さも身につまされます。勿論、自分ではどうしようもない重い苦しみを与えられている人々と同レベルで語るなって事でしょうけれど...
 お金を貯めて性適合手術を受ける事を夢見つつ、孤独と不安を抱えながら新宿の街で暮らす凪沙のもとに一果がやってきて、孤独が共鳴し、一果の天賦の才に希望の光を認め、凪沙の運命の歯車が動き出す。束の間の幸せの後、擬似親子モノのお約束で本物の母が出てきて離れ離れに。これを機に慎重だった筈の凪沙が、盲信的に性別適合手術を受ければ一果の母に成れると暴走し、結果希望を失って無気力になり、自らを悲劇的な状況に追い込むけれど、彼女の暴走がなければ一果はバレエを続けられていない訳で暴走は決して無駄では無かった。凪沙は見方によっては愚かな選択をしたかもしれないけど、そこには深い母の愛情とある種の成就もあった。それはもうハッピーエンド、まごう事なく哀しくも美しいラブストーリーかと...間違い無く邦画No.1です自分史上。
 それにしても本当に海辺の凪沙は美しかった。手負いの白鳥が必死に羽を伸ばして、その日まで守り育てた親から逸れた若い白鳥を早く大空へ羽ばたけと促しているかの様でした。
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