ぷるめりあ

ミッドナイトスワンのぷるめりあのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

周囲で話題になっていたので先行上映にて観賞。
『草彅剛がトランスジェンダー役に挑む』『バレエシーンが美しい』
程度の知識だけで観賞。
ひとつ気になったのは『予告編だけで泣いた』等の書き込みが多いこと。
実はこれまで『泣ける映画』と言われるものを観て泣いたことが…ほとんどない(苦笑)。

さてストーリー。
トランスジェンダーとして生きにくさを感じながら暮らす凪沙【草彅剛】のもとへやって来た、厳しい環境で育っていた一果【服部樹咲(みさき)】。
本人達の意思と関係なく突然始まった二人の共同生活は、
やがてかけがえのない日々になる…。

とにかく一果役の新人、服部樹咲が素晴らしい。
演技は初めてということで、前半のぎこちなさ、慣れない環境に心を閉ざす姿などは本人の不安な気持ちとリンクしているようで、触れたら壊れてしまう脆いガラスのようだった。
それが後半。バレエという夢をみつけた彼女は、堂々と前を向き、踊ることが楽しくて仕方ないという表情で、まるで別人だった。バレエは全く分からないが、素人目にも踊りがめきめき上達して行くのは分かった。
その変化、彼女の【成長】をこの映画が鮮やかに切り取ったと感じた。

一果の友人、りんを演じる、上野鈴華もとても、とても良かった。
後半の診察室の表情、最後に踊るシーン……は大変印象的だ。

脇を固めるベテラン勢も魅力的な俳優ばかりだが、あえて名前を挙げるとすればバレエ教師の真飛 聖、凪沙の同僚の田中俊介が強く印象に残っている。

トランスジェンダーという言葉は耳にしたことがあっても、実際にどんな生活を送り、どんな悩みを抱えているか知らなかったので、映画はほんの一部とは思うが、厳しい現実に衝撃を受けた。
あまりにも知らないことが多すぎて、凪沙の病院でのシーンなどは理解出来ない部分もあった…。

他にも細かい話だが、凪沙の実家での展開が少しはしょりすぎて説明不足に感じた。根岸季衣とはもう少し絡みが見たかったし、水川あさみが本当に改心したのか?(笑)分からずにややモヤモヤは残った。
このあたりは原作本を読むと解決するのだろうか…。


最後に草彅剛。
テレビドラマ『僕の生きる道シリーズ』や『任侠ヘルパー』『嘘の戦争』など、以前から役者として素晴らしいとは思っていた。
が、今回の凪沙は、これまで知っている草彅剛ではなかった。
女性になりきれなくて苦しむ前半から、一果のために母親になろうと死にもの狂いで奔走する後半。
ただただ、圧倒された。
慈愛、切なさ、いとおしさ…画面から溢れ出る、母としての無償の愛が伝わってきて押し潰されそうだった。凄かった。

あまり事前情報は仕入れずに、先入観なく、沢山の人に観てもらいたい映画だと思った。




余談。
周りからはすすり泣きが聞こえてきたが、今回も涙は出なかった。
しかし心に沢山、感じるもの…熱い想い、苦しみ、光も…受け取った。
今、この映画を観られて良かったとしみじみ思う。
ぷるめりあ

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