貧富も人種も混じり合うイースト・ロンドンの公営住宅で母と弟と暮らす、15歳の少女・愛称ロックスはメイク上手の人気者で、いつも親友たちに囲まれている。
しかしある日、母が「心の整理をしたい」とのメモと僅かなお金を残し姿を消してしまう。
以前も同様のことがあったようで、母はすぐに戻ってくると弟に言い聞かせながら、母の携帯に連絡するが一向に出ない。
遠方にいる病気の祖母に電話し「子育てに向かない女なのよ」と言われると「そんなことないよ」と答える健気なロックス。
学校にも友達にも相談せず、弟の面倒を見ながら何とかしていこうとするロックスは、普段通り学校に通い、嫌われていたエキセントリックな転校生ロシェと仲良くなったりしていたが…
母が出て行く朝に流れたその気配。
お金もなくなり、電気も止められてしまう家。
心配した近所からの連絡で現れた福祉局の係員から逃れるように友達の家を泊まり歩く…
母に反抗していたわけでもなく、何も悪くないロックスと、学校のペットのカエルを世話するために持ち帰ってきた弟の姿に胸が締め付けられます。
監督含めすべて女性の製作陣が9ヶ月に渡り、演技経験のない10代の若者たちと過ごし、ワークショップを経て製作されたということで、ナイジェリアンの主役ロックス（ブッキー・バックレイ）、弟エマニュエル、親友の一人イスラム系のスマヤ（コーサル・アリ）など、リアルな演技が素晴らしい。
このまま道を踏み外してもおかしくない状況に置かれたロックスを、親友たちの存在が支える。
学校のネットフェンス越しに弟を見つめるロックスの姿で涙腺崩壊。
スマホ画角も効果的に使われてました。
APARTMENT by Bunkamura LE CINÉMA
・英国アカデミー賞: Best Casting
・英国インディペンデント映画賞: 英国インディペンデント映画作品賞、Rising Star Award（ブッキー・バックレイ）、助演女優賞（コーサル・アリ）他
・ダブリン国際映画祭: 審査員賞(Best Ensemble) など
