にくそん

ファーストラヴのにくそんのネタバレレビュー・内容・結末

ファーストラヴ(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

原作を読んだとき、自分の心の底にわだかまったものがあったことに気づかされた。でも、原作のときにそういう経験をしたので、映画はもう大丈夫だろうと思っていた。大丈夫ではなかった。途中、何度か映画を観ながら意識が映画を離れて、自分の過去をさまよっていた気がする。

要は、あれは初恋だった、ということにでもしなかったら、自分に起きたことが悲しすぎてやりきれないから、初恋だったと自分に言い聞かせ、人にもそのように主張するっていう、タイトルはそういう苦い意味。そっくりこれと同じ体験をした人は少ないにしても、よく似た感覚を抱えている女性は多いんじゃないかと思う。私は彼を好きだったしあれは合意の上のことだった、父のあの言動には少し驚いたけど男の人にはよくあることなので私も別に気にしていない――、そういう呪いを自分にかけたことがない人、いるんだろうか。

テーマと自分との距離があまりに近くて、映画をアートとして鑑賞できた自信がないけど、北川景子さんも、芳根京子さんも、そこにある痛みが伝わってくるような、真に迫ったお芝居ですてきだった。接見室で向き合う二人の顔が、アクリル板の反射で重なる演出が印象的。中村倫也さん、窪塚洋介さんもさすがの仕事ぶり。この映画で自分が存在感をどれほど発揮していいのか、ちゃんと知っている人たちだと感じる。呼吸のしかたにさえ、計算が立っていそうだ。

この映画の評点が低いのは残念で、私はこれをいい映画だったと思うんだけど、ならば何点がふさわしいと思うのかといえば、まったくカンが働かない。
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